『アフリカン・カンフー・ナチス』
6月初旬。筆者がインスタで映画Tシャツの投稿をすると、あるアカウントが「いいね」をしてくれました。それは配給会社「トランスフォーマー」の公式アカウント。トランスフォーマーさんと言えば石井聰亙監督の『狂い咲きサンダーロード』のリバイバル上映をはじめ、最近では常軌を逸した制作体制で完成されたドイツ映画『DAU. ナターシャ』など、強烈な作品を配給してきた会社です。
現在はどんな作品を配給しているのか、気になってアカウントを覗いてみると…。
なんだこれ…ネタか…?と思い予告を観ると…。
マジでした。ナレーションには若本規夫氏を起用するガチっぷり。
ヒトラーだけでなく東条英機まで一緒にガーナへ落ち延びて、なぜか現代まで生きていたという謎が謎を呼ぶ設定。さらにヒトラーの道場破り(道場破り?)を阻止するため、アフリカン拳法の使い手である主人公が、ヒトラーを倒すために必殺トーナメントに出場する破天荒なストーリー。そして安定のB級クオリティ。これは見るしかない…。
本作の監督を務めるセバスチャン・スタインは日本在住のドイツ人。「VICE Japan」にて異なるジャンルのミュージシャンが物理的に戦う“異業種格闘技”番組をはじめ、アングラな作品を制作していました。『アフカン』を制作したきっかけについて、パンフレットの言葉を引用すると「2018年。ひどい二日酔いから目覚めると、ふいに『アフリカに行きたい』と思いうようになり、その目的を実行するための口実として本作の脚本を2日で書いた」とのこと。酔いが覚めてなさすぎる。
ちなみに東条役の秋元義人氏は俳優ではなく「なんでも屋」。セバスチャン監督とは「異業種格闘技」でパンク代表として出場したのを機に仲良くなったそうです。(なお試合は完敗)
共同監督にはガーナで映像制作をするニンジャマン。日本ではその名を知らなくても、過去にSNSでこんな映像を見た人もいるのではないでしょうか?
作中でも、こんな感じのCGがぶっ込まれます。
他にもニンジャマンの公式YouTubeチャンネルでは『アフカン』のような空手をテーマにした作品をアップしているので、気になる方はチェック!こんな感じの最強(凶)布陣によって『アフカン』は制作されました。
公開初日に観に行こうとするも、チケット完売――。
筆者の住む愛知県内では名古屋のセンチュリーシネマにて上映とのことで、さっそく初日・初回の回を見に行こうとしたら…
完売だと…?
センチュリーシネマにはチケット予約システムがあるのですが「初日の初回なら余裕だろう」と予約せずに行った結果がこれです。ナメた真似してすいませんでした。悔しかったので、作品の規模に反して異様な充実を見せるグッズ(パンフ、Tシャツ、ステッカー)を買って帰りました。
筆者(175cm)は「ガーナアーリアTシャツ」のMサイズを買いました。Lはかなり着丈が長い。
数日後、監督登壇の舞台挨拶が決定
完全に最初の勢いと熱量を失いつつあった筆者ですが、その数日後に吉報が!なんと監督による舞台挨拶(&サイン会)が決定したのです。
ある意味初回で観られなくてよかったかも…。早速チケットを予約し、事前に買っておいたパンフレットを持参して鑑賞しました。
映画『アフリカン・カンフー・ナチス』感想
本作を鑑賞して驚いたのが、ヒトラー役で出演しているセバスチャン監督の鍛え上げられたボディです。無精ひげの上からちょび髭を描くテキトーさと、大げさなヒトラーのモノマネをしても、隠し切れない肉体美とグッドルッキングガイ…。監督もバチバチにアクションシーンに参加し、素手で人を殺す活躍っぷり。なにより全体的にカンフーバトルはキレッキレなので見入ってしまいます。
しかしそれ以外の演出は安定のニンジャマンクオリティ(?)であり、B級ではおなじみ(?)の「雑なCGだけどグロ描写をじっくり見せたい」というこだわりがじわじわと笑いを誘います…。あれだけヒトラーを倒すまでの格闘トーナメントは見ごたえがあったのに、ラストが雑過ぎて会場は笑顔に包まれました(嬉)
予告編ではガーナ出身の人たちに関西弁の字幕が当てられていますが、なんと本編でもずっと関西弁です。おまけに登場人物に「アカンテ」って名前のやつがいて紛らわしい笑い
あまりのテキトー演出とゴリゴリのアフリカン・カンフーアクションのギャップが激しいので、いい塩梅に酔っぱらいつつ、ヘラヘラしながら鑑賞するのが一番楽しめると思います。劇中のサントラも陽気なナンバーがそろっているので気分がいいです。修行シーンすらアゲていけます。サントラ欲しい!
舞台挨拶で印象に残ったことをまとめてみる
舞台挨拶は(おそらく)配給の方がMCを務め、監督が作品について解説していく形でスタート。さらに、くじ引きで『アフカン』のガーナ版ポスターが当たるイベントもありました。(くじを引くのは監督ではなく、一緒に名古屋まで来たガールフレンド)
以下、監督のお話で印象的だったものをまとめてみます。
Q.なんで字幕は関西弁なの?
A.監督の母国ドイツでは、映画の中で複数の言語が話される際、字幕はドイツの方言で書き分けがされていたそうです。監督が好きなカンフー映画の字幕で同様の手法が使われており、『アフカン』でも起用しました。
Q.このストーリーのテーマは?
A.実は本作では「ヒトラーをダサく描くこと」が一つのテーマだと語っています。ドイツではヒトラーをタブー視しすぎたことで、かえって若者を中心に「アイコン化」されていると感じたそうです。(鍵十字カッコいい!みたいな)そこで本作のように、ヒトラーを極端にダサく描くことで「アイコン化」を阻止しようとする魂胆もあると語っていました。(監督曰く「ま、それ以外はテキトーだけど笑」とのこと)
Q.本編と関係のないことで死にかけたってマジ?
A.ガーナの制作体制はデフォルトで崩壊しており、撮影開始は予定した時間の6時間後。演者が逮捕される。車が故障し移動で撮影時間がつぶれるなど日常茶飯事だったそうです。特にガーナの車は基本的にボロい。撮影で使用した車は運転中に爆発したそうです。監督は爆発直前まで車に乗っており、降りたくてもボロすぎてドアが開かず死にかけたとか笑(笑い事ではない)
Q.続編はある?
A.なんと既に続編の構成も監督の頭の中にあるそうです。しかも純粋な続編と合わせて、「アフリカン・怪獣・ナチス」(仮)という別テーマまで考えていると話していました。なんでも『ゴジラ』で登場するめちゃくちゃマイナーな怪獣を取り入れたいと話しており、こちらも実現すればかなりカルトな映画になる予感…。
まとめ
終始ノリもよく、面白おかしく撮影当時のことを振り返ってくれたセバスチャン監督。サイン会でもシャイな筆者に「アリガトーウ!」と陽気に挨拶してくれました。明るい…。
ちなみに舞台挨拶では配給の方がパンフを何度も推していたのですが、マジで映画に負けないレベルで面白い内容が詰まっています。制作中に死にかけた監督のプロダクションノートには、まだまだヤバい制作秘話がたくさん記載されていました。ほかにも、作中に登場するお酒「アドンコ」を輸入しようとする、血と汗と涙の詰まったアドンコ輸入奮闘記は必読です。(※6/21時点で輸入に成功していました)
筆者が鑑賞したセンチュリーシネマでは2週間限定上映(6/12~6/24)のところ、上映期間の延長が決定していました。緊急事態宣言も解除されたので、これを機にお酒を飲みながら、映画館で観てみてはどうでしょう。本作を見た後は1日中ご機嫌だったので、多分健康にもいいです。おすすめ!!
『アフリカン・カンフー・ナチス』公式サイト
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