皆様はトム・ムーアというアニメ映画の監督をご存知でしょうか?
「ポスト・ジブリ」と称されるスタジオ「カートゥーン・サルーン」にて制作された『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(14)をはじめとする作品のほとんどがアカデミー賞にノミネートされるなど、今最も注目を集める監督です。
独特の作画やキャラクターデザイン、優しい色使いとケルト神話をベースにしたファンタジーが大きな特徴となっています。


そんなトム・ムーア監督最新作『ウルフウォーカー』が10月30日より公開!
少女たちのまぶしい友情、大人たちの醜い差別心、眠ると魂が抜け出しオオカミとなる「ウルフウォーカー」の活躍を味わえる、大人も子どもも見るべき傑作となっていました!
映画『ウルフウォーカー』(原題:Wolfwalkers)あらすじ
中世アイルランドの町キルケニー。イングランドからオオカミ退治のためやってきたハンターを父に持つ少女ロビンが、森の中で友だちになったのは“ウルフウォーカー”のメーヴだった。人間とオオカミがひとつの体に共存しているばかりか、魔法の力で傷を癒すヒーラーでもある彼女とロビンが交わした約束は、図らずも父を窮地に陥れるものだった。だが、少女は勇気を持って信じる道を進もうとする。
https://child-film.com/wolfwalkers/
キルケニーでオオカミは憎まれる存在として描かれており、ロビンとメーヴの友情を描く一方で、人とオオカミの対立も描いています。
さらに、メーヴの母親はオオカミになったまま戻ってこず、彼女の母をめぐり、ロビンと彼女の父親の溝も深まってしまうのです。
友情と親子の絆で揺れるロビン。人がオオカミに持つ差別…。
子どもだけでなく大人も満足するストーリーが『ウルフウォーカー』にはあるのです!
「ケルト三部作」を締めくくる迫力あるストーリー!


『ウルフウォーカー』はトム・ムーア監督が手掛けてきた「ケルト三部作」の完結作でもあります。
上記でご紹介した『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』をはじめ、『ブレンダンとケルズの秘密』(03)も、この「ケルト三部作」です。
ケルト神話から着想を得た3作はどれも見応えがありますが、特に『ウルフウォーカー』はエンタメ性に富んだ作品となっており、神話の知識がなくても十分楽しめます。
また、この3作は続編ではないので、過去作を見ていなくても問題はありません。
しかし『ウルフウォーカー』の作中には、過去作で登場したキーワードやアイテムが登場するシーンもありました。
amazon primeには吹替版が見放題で配信(2020年10月時点)しているので、気になる方はチェックするのがおすすめ!
↑『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』では主人公の父親の吹き替えをリリー・フランキーが担当しています。
実写ではなかなか見れない、荒ぶる演技が聞けるので吹き替えもおすすめです。
なお『ウルフウォーカー』では、主人公の父親の声優を井浦新が担当。
少女たちの尊すぎる友情がまぶしい…


なんと言っても『ウルフウォーカー』最大の見どころは、主人公ロビンと「ウルフウォーカー」のメーヴが育む友情です!
このシーンだけでもまぶしすぎてお腹いっぱいになります。
父の背中を見て育ったロビンは、ウルフハンターとして一人前になりたい一心で、父の言いつけを破って森に入ります。
そこで神秘的な存在「ウルフウォーカー」であるメーヴやオオカミに出会うことで、オオカミを狩るのではなく、共存していく素晴らしさを知っていくのです。
大自然の中で駆け回り、笑いあい、遊び回る…。
2人とも友達がいなかったこともあり、ものすごいスピードで仲良くなります。相手の髪梳かしてますからね。尊い…。
正直この眩しすぎる友情シーンだけでも大満足している自分がいました。
ありがとう、トム・ムーア監督…。
友情に反して広がる親子の溝


ロビンとメーヴが友情を育むシーンだけで最高に尊い…。
その場面でも満足なのですが、それではストーリーが成立しません。
「ポスト・ジブリ」と称されるケルト三部作ですが、徹底的に違う点が親と子のディスコミュニケーションです。
『ウルフウォーカー』では、ロビンが父のオオカミ狩りを阻止しようと奮闘しますが…。
国に仕える身の父は生活もかかっているし、オオカミを差別する国で彼らの味方をすれば罰は免れません。
ロビンと父の考えは悲しいほどすれ違い、さらにはロビンの身に起きた”ある変化”が、二人の溝をより一層広げてしまうのです。
まだ幼いロビンが、親と親友どちらかを選ばなければならないハードな展開も必見。
そして究極の選択を迫られるのは、ロビンだけではありません。
父もまた、国と娘の間に立たされてしまいます。
国に背く娘を失いたくない一心で、涙を流すシーンも…。
『ウルフウォーカー』は「ケルト三部作」の中で、殆どのキャラクターが涙を流す演出も印象的でした。
ロビンとメーヴだけでなく、ロビンと父の関係性にも注目したい内容です。
『ウルフウォーカー』はバトルシーンもアツい!


トム・ムーア監督作の中でも、『ウルフウォーカー』はバトルものとしての要素もアツいのです!
人間(あるいは人の姿をした別の種族)が別の生き物に変身する設定は、戦闘のバリエーションも増え、画的にもカッコいい。
最近だとNetflixオリジナルアニメ『BNA ビー・エヌ・エー』の「銀狼」もその一種。
ゲームでは「ファイアーエムブレム」シリーズのマムクート(普段は人間の姿だが、真の姿は竜)や、「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」でも主人公リンクがオオカミになる仕様でした。(こちらは自分の意志で戻れませんが…)
アクション要素はありませんが、トム・ムーアの過去作でも、海ではアザラシ、陸では人間の姿をする妖精「セルキー」(『ソング・オブ・ザ・シー』)や、オオカミの妖精(『ブレンダンとケルズの秘密』)が登場します。
「ウルフウォーカー」は当人が眠っている間だけオオカミになることができ、オオカミで負った傷は人間の肉体に反映されるなど、細かい設定もなされています。
ネタバレを避けるために多くは言えませんが、まだまだいろんな能力があったり…。


↑「ウルフウォーカー」には他者の傷を癒す「ヒーラー」の能力もある。
「FE」シリーズにいたら重宝しそうなクラスじゃん…(何の話?)
前半の友情パートとは変わり、後半は人間のオオカミに対する差別、そして両者の衝突が描かれます。
そこで繰り広げられるバトルシーンは迫力満点。
前半の色彩豊かな演出から、暗いトーンで戦争の醜悪さを叩きつけます。
「ウルフウォーカー」の能力もフルスロットで発揮され、目まぐるしいバトル展開はアクション好きにも見てほしいです。


アイルランドならではの神秘的なストーリーと、万人が楽しめるエンタメ要素が見事に合体した『ウルフウォーカー』は10月30日公開です!
躍動感あふれる映像とまぶしい友情物語を、ぜひ映画館で見て下さい!
映画『ウルフウォーカー』作品情報


公開日:2020年10月30日(金)
監督:トム・ムーア、ロス・スチュアート
脚本:ウィル・コリンズ
キャスト:オナー・ニーフシー、エバ・ウィッテカー、ショーン・ビーン、マリア・ドナル・ケネディ、サイモン・マクバーニー
日本語吹き替え:新津ちせ、池下リリコ、井浦新
上映時間:103分
製作国:アイルランド・ルクセンブルク合作(2020)
配給:チャイルド・フィルム
公式サイト:https://child-film.com/wolfwalkers/
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