最近映画を見る手段としてちょくちょく使っているのがYouTubeだ。定額サブスクのAmazon PrimeVideoやNetflixに比べると、1本あたりレンタルで200〜400円ほどとどうしても割。だが、近くのゲオに行くよりは楽だし意外な作品が配信されてたりして楽しいんだよね。今回もそんなYouTube映画を巡回してたら見つけた、ちょっとマイナーな映画を見てみたよ。
『リトルトウキョー殺人課』! 1991年のアメリカ映画で、以前からその存在は知りつつも見る機会がなかった映画だ。まさかYouTubeに金を払えば見られるとはな! この映画の注目ポイントは主演がドルフ・ラングレンであること。そして監督がマーク・L・レスターであることだ!
マーク・L・レスター‼︎ 言わずとしれた『コマンドー』の監督だ。『コマンドー』の監督がドルフ・ラングレンを撮る! さらに後述の強烈な要素も相待って、いつか見てみたいと思ってたんだよね。上映時間も1時間10分ほどとお手軽なので午後の一服にでも見てみて欲しい。






(C) 1991 Warner Bros. Entertainment Inc.
本編がはじまるまでスタッフロールとともに2分に渡って延々イレズミ入りの筋肉を見せられるハメになる。さらにドルフ・ラングレン主演映画なのにここで2分見せられる筋肉はドルフ・ラングレンの筋肉ではない。なんなんだよ
物語の舞台はタイトルの通りロスアンゼルス・リトルトウキョー。要するに日本人街だな。そこを管轄に働く刑事、ラングレン演じるケナーは日本人の母と進駐軍の父を持ち、幼少期は日本に住んでいた。アメリカに渡った今でも、日本に強い憧れ・愛着を抱いている男だ。アジア特捜隊に所属している彼はリトルトウキョーを舞台に、地域を牛耳っているヤクザ「鉄の爪」と戦うことになるのだが……。
このあらすじからもなんとなく察せられる通り、本作はかなりの「勘違い日本文化」成分が含まれている。それもぶっ飛びすぎててステレオタイプにすら至ってないような……いや、それとも90年代初頭ならこんなもんなのだろうか⁉︎ どこまでが勘違いなのか、どこから本気なのか、どこから真面目でどこから演出なのか。次々に繰り出されるレスター流日本描写に、だんだん自分の中の「日本」が揺らいでくること間違いなしだぜ。
序盤、日系人が営む定食屋(店頭にはSUSHIと書かれている)で拙い日本語で会話を楽しみながら朝食をとるケナー……なんかは微笑ましく見ていられる。ラングレンの日本語もなんだかかわいらしく感じられるくらいだ。だが敵が潜むストリップクラブ「盆栽クラブ」で女体盛りが楽しまれてるあたりからだんだん雲行きが怪しくなっていき、「女性は恥辱を受けるとものすごい荘厳な儀式をしながら切腹する」「布団がかけられていない剥き出しのこたつを火鉢のように使うケナー邸」とかを目の当たりにすると「出た! 勘違い日本! 笑える!」というより「これは……何か制作陣は素で勘違いをしているのでは……?」と見ていて疑心暗鬼に陥っていく。こいつら、本気でやってるんじゃないか……?
例えば『ジョン・ウィック:パラベラム』とか『ウルヴァリンSAMURAI』あたりの日本描写はちょっと笑えるじゃん。多分これ製作側も盛ってるよな〜みたいな気持ちで爽やかに笑うことができる。でも『リトルトウキョー殺人課』は……ぶっ飛んでるといえばぶっ飛んでるんだが、なんか「もしかして天然ボケなのでは⁉︎」って思えてしまうところが多々ある。
ただ、それが「つまんねえ!」ではなくだんだん愛しさに変わってくるのはこの映画のいいところだ。例えばケナー邸のタンスには謎のひらがなが書かれた半紙が貼ってあり、一見意味不明だ。だが映画に入れ込むことに成功すれば「そうか……ケナーは日本を愛しむあまり、ひらがなの書き取りをすることで故郷を想っているんだな」と解釈することもできる。






大量の暗器が隠されたタンスには謎のひらがなが。このシーンで無造作にラングレン筋肉で投げられる手裏剣の殺傷力は素直なかっこよさに満ちている
また、お世辞にも大傑作とは言えないが勘違い日本描写を除けば普通におもしろい刑事バディもの(あくまで普通レベルではある)として見ることもできる。ブランドン・リー(ブルース・リーの息子)演じる相棒のジョニーも、ラングレンの引き立て役に甘んじることなく、また主役を食うこともなく2号ライダーポジションとしてしっかり活躍するのがうれしいところだね。登場する日本人、日系人もしっかりドスの効いた日本語で啖呵を切ってくれるし、それによってラングレンの稚拙な日本語がよりキュートに聞こえてくる。
とくに両親の復讐に燃え、ヤクザを射殺しようと暴走したケナーを相棒のジョニーが「サムライじゃなく20世期の警察として、奴を法の元裁こう」と諭すシーンは胸熱だ。それまでの日本描写、ケナーの口から語られる武士道を尊びすぎることなく、あくまで現代のルールで戦おうと宣言するこのシーンにはかなりジーンとしてしまった。もしかしたらいい映画かもしれない……!
ま、そんなふうにじーんとしてるのも束の間、次のシークエンスではふつうにケナーがヤクザを先制攻撃で射殺しまくるのでズッコケてしまったんだがな。おい!!! 20世期の警察!!!
その直前に言い訳程度に「先に撃ったりはしないぜハハハ」とか言ってたので余計にオイ!!!! ってなっちゃったよ。先に撃っとるやんけ。ハンが先に撃った!
しまいにはクライマックスで法被に闘魂鉢巻という謎サムライ装束で戦い始めるのには参った。だからサムライとして戦うのはやめようって言ってたじゃねえか! そんな格好なのに得物は刀じゃなくてアサルトライフルなんだから敵わねえ。やっぱりこの映画天然ボケなんじゃ?












静止画で見ると完全にふざけてるように見えるけど通して見るとどこまで本気なのか本気でわからなくて混乱させられるケナーの戦装束
そんな感じで感情をどこに据えればいいのか決め兼ねてるうちに70分しかない映画はどんどん終わりに近づいていく。最後まで「この映画は笑っていいのか?」と悩みながら見ていたが、ラスボスの死に様がまるで漫☆画太郎作品のごとくヤケクソなのには爆笑。誇張なく涙が出るまで笑ってしまった。耐えられねえって! その死に方はぜひみんなの目で確かめてみて欲しい。
『リトルトウキョー殺人課』、まあマイナーな映画にはマイナーで収まってしまった理由があるわな……。と思いつつ、なんだかかわいげあって覚えておきたくなってしまう作品。でも大手を振って「怪作! 奇作!」と騒ぎ立てるほど引っ掛かりがあるわけでもなく……と言った感じのミョーな作品だが、ある程度幸せになれることは保証します。『コマンドー』のような迫力はないことを肝に銘じつつ、パック寿司でもつまみながら見てみて欲しいぜ。






最終決戦でケナーが『コマンドー』のメイトリクスとまったく逆の挑発を叩きつけるシーンは謎の文脈を感じてしまう(でもこのあとの殺陣はイマイチ)






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