そのまんまの内容だけどタイトルで惹かれると騙されるぜ!『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』

『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』

あらすじ

先ごろ、カナダ政府とアメリカ政府が、隠匿していた衝撃の事実が判明した! カナダの自然豊かな山中で、未確認生物“ビッグフット”の存在が証明されたのだ! しかも、そのビッグフットは殺人ウイルスの保菌者であり、直径80キロ圏内の野生生物を死滅させるほどの威力を持っていた。人間への感染も確認され、すでに死に至っているケースもあるという。史上最悪の感染症が猛威を振るう中、当局はこの危機的事態にワクチンの生成を試みるも失敗。しかし、殺人ウイルスへの免疫を持つ数少ない人物を特定することができた。その人物こそ、カルヴィン・バール氏である。殺人ウイルスに免疫を持つカルヴィン・バール氏はなんと、第二次世界大戦の最中、史上最悪の独裁者アドルフ・ヒトラーを暗殺した最強のナチハンターだった! 年老いた現在はリタイア中のカルヴィン氏だったが、FBIの要請を受け、最後のハンティングに挑む――。

タイトル通りの内容! でもタイトルからは想像できない内容!

 AmazonPrimeVideoで『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』を見たぜ! みんなはこのタイトルからどんな映画を想像するかな? 「バカ映画じゃん!」って思ったりするんじゃないかな?

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字幕版だけPrime見放題対象だった(’21年10月現在)

 それがこの映画、チョット複雑でよ……。正直、見終わった感想としては「バカ映画です」的なことはあんまり言いたくないみたいな気持ちがある。この映画、すごく綺麗な映画なんだよ。かつていろんなことをした老人のその後の生活みたいなのがすごくいい画とともにしっとりと美しく描かれていく……。街の人たちや弟との関係も素敵で、「ああ、いいものを見てるなあ…」と素直に穏やかな気分にさせられてしまう。

©2018 MAKESHIFT, LLC.
やたらきれいな映像としっとりとした展開がタイトルで惹かれたぼんくら達に殴りかかってくる! 禅……侘び寂び……そういったものすら感じさせる

 じゃあ「バカ映画じゃないんだね!」と言われると正直者の私としては「いや、間違いなくバカなところもある!」と言わざるを得ない。DXナチスウォッチとかサプライズビッグフットめいて突如主人公の身に振りかかる圧倒的ビッグフット真実などは間違いなくバカの息吹がある。

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第二次世界大戦当時は世界一バカと言われていたナチスウォッチ

 銃をセレクトするシーンで「デーン!」とアップ演出を使うところなんかかなり意図的なバカ、ボンクラの息吹を感じるので一概に「この映画は狂人が大真面目に作った結果、偶然バカなシーンが誕生してしまいました…」と言い切ることもできない。

 でもな〜でもな〜。なんかこの映画を茶化しの文脈でとりあげるのはなんか抵抗があるんだよな! 真摯、真摯なんですこの映画。この主人公の物語を描く、人生を映画にするという点においてすごく真摯だしそこは完全に芯が通っていてバカ映画を撮るぞ〜という浮かれた気持ちは全然ない。何だろう。多分前述のバカシーンもあくまで映画を見にきた人へのサービスシーンなんじゃないだろうか、そう思えてしまうくらいにはちゃんとやってる。やってるはずなんですよ……。でも総合的にはやっぱり変な映画なんだよなあ。なんだろう! 間違いなく言えることは「私は好きです」ってことだしすごく好きな人もいると思うので「怪作だ〜!」とウケ重視で飛びついてもらっちゃっても結果としてはいいかもしれない。予想を見事に裏切られるかもしれないし……。まあ「思ってたんと違う!!!ってなる可能性も大なのですが。

君たちは殺したあとどう生きるか

 さて『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』のあらすじですが「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」としか言いようがない。マジでそういう話なんです。君がこの映画を見終わったとする。そして友達に「どんな映画なの?」と聞かれる。すると君はこう答えるだろう。「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男の話だ」と……。

 もう少し内容の話をするとこの映画は「ヒトラーやビッグフットを殺すような男の人生はどんなもんなのか?」って内容なんだよな。言おうと思えば「男の再起の話」とも言えるし、「ヒトラーを殺して世界を救った男が再度世界を救う!」と言うこともできる。でもなんかこの映画の画作りを見てるとそういうヒロイックな言い方は憚られるんだよな〜。

 勝手な想像なんですけどこの映画はおそらくヒトラーにしろビッグフットにしろ、総ての殺しには「殺す前」の人生があるし「殺した後」の人生もあるってことを描きたいんじゃないかなあと思った。だからビッグフットを殺した後も意外なほどエピローグは長いし、前半同様に割と穏やかにも見える生活がしっとりと描かれる。殺すことを迷うこともあるし、殺したことを長く後悔することもあるだろう。それでも命ある限り人生というのはあるしやっていかなければならないんだよね粛々と……。って話なんじゃないかなと私は勝手に受け取りました。私がそう思っただけだし、もしかしたら監督(脚本も制作もやっとる)がどこかのインタビューで「いや〜、バカな映画を作っちゃいましてね笑」とか答えてるのかもしれない。でも何だか私ゲロをぶちまけるビッグフットを見てもなお、そんなメッセージめいたものを感じずにはいられなかったんだぜ。まあ映画を見るって多かれ少なかれそんなもんだよな。なんか見て、何か勝手に思い込むしかできないんだ我々は。というわけで皆さんもぜひ見て「何だこの映画!?」って思ってみてくださいね。それじゃあな。

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