『ゆがみ。呪われた閉鎖空間』
狭い空間や密室、風通しの悪い環境は息が詰まりストレスも多い…
しかし、逆にそのような空間はホラーとの相性が良く、怪談やホラー映画では定番のシチュエーションである。
そんな息苦しく、恐怖を増長するような「閉鎖空間」にフォーカスした短編を集めたオムニバス映画『ゆがみ。呪われた閉鎖空間』を紹介しよう。
『ぞくり。』や『鬼やば』シリーズを手がける十影堂エンターテイメントの劇場公開作品『ゆがみ。』は以下の8編で構成される。
- 1.ベッドの下から
- 2.テントの中で
- 3.忘れもの
- 4.メイキング
- 5.×印の手袋
- 6.報復
- 7.生命保険
- 8.ツナガル
全体95分で8つの短編を収録しているため、それぞれが10分程度と非常にコンパクトな作品となっている。
そのため、それぞれの話で展開する出来事について深く掘り下げるような描き方はされないが、原因不明の怪異に襲われる理不尽さや、正体不明のものに対する恐怖感が引き立つような話が多い。
1.ベッドの下から


1本目の「ベッドの下から」では空き巣に入った男がその家で事件に巻き込まれる内容で、とっさに隠れたベッドの下では身動きが取れず、息をひそめるしかない状況に追い込まれる。
空き巣という自業自得の状況とはいえ、目と鼻の先がとんでもない状況になる中身動きが取れないシチュエーションは恐怖感を煽り、「閉鎖空間」を全体のテーマにした映画の掴みとして非常に引き込まれる。
人間による事件系かと思いきや、途中テイストが変わり話が展開するのも面白い作品だ。
4.メイキング


8つの短編の内、5本は『ぞくり。』の監督として知られる夏目大一朗監督作だが、4本目の「メイキング」は佐藤公紀監督によってPOV作品として制作されており、監督による作品の毛色の違いを味わえるオムニバス作品ならではの魅力が感じられる。
心霊スポットとされるトンネル内で、映画の撮影を行う若者が怪異に巻き込まれる様子をその映画のメイキング映像を撮影しているカメラを通して描かれる本作だが、トンネルという暗く狭いホラースポットとして定番のシチュエーションとPOVのザラついた質感がマッチし恐怖感が引き立つ。
POVと作品といえば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を思い浮かべる方も多いと思うが、本作「メイキング」ではブレアウィッチをオマージュしたようなクルー内での内輪揉め描写があり、思わずニッコリしてしまうと同時に、トンネルという閉所・暗所におけるそうした険悪な空気感が「この先何か起こるのだろう」というホラー展開のイメージを駆り立て、恐怖感を盛り上げるのに一役買っているように感じた。
8.ツナガル


ラストの「ツナガル」は佐々木勝己監督が手がけた作品で、死者と通話できる電話ボックスを舞台に、亡くなった姉に生前伝えられなかった思いを伝えようとする女子高生の姿が描かれる。
もはや目にすることがほぼなくなった電話ボックス。
狭い、周囲の異変を確認できる、脱出も難しい。という非常にホラーシチュエーションに適した閉鎖空間である電話ボックスを題材にした作品が最後に待ち構えており、展開は予想しやすい部類ではあるが、堅実なホラー演出でしっかり怖い作品に仕上がっている。
『ゆがみ。呪われた閉鎖空間』抜粋版
上述した3本の他、特徴的な「閉鎖空間」を題材にした短編が収録される『ゆがみ。』だが、現在期間限定で抜粋版がYouTubeにて公開されている(2021年1月現在)。
気になった話がある方は、ぜひこの機会に本編をほとんど観ることのできる抜粋版にて確認してみよう。
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電話ボックスや車の中、住宅、テント、トンネルなど、閉鎖された空間を舞台に怨霊が巻き起こす恐怖を描いたオムニバスホラー。数年前に事故死した姉と話そうと「死者と繋がる」と言われる公衆電話に半信半疑で訪れた女子高生が主人公の「ツナガル」(主演:相楽樹)、映画撮影のため使われていないトンネルを訪れた撮影クルーたちが恐怖に襲われる「メイキング」(主演:鮎川桃果)、死体処理を生業とする女が、これが最後の仕事と決めた遺体を運ぶ最中に起こる出来事を描いた「報復」(主演:田中広子)など、8編のショートストーリーを収録。