NETFLIXで7/3から配信が開始された『呪怨:呪いの家』が話題沸騰中だ。
人間的な恐ろしさにフォーカスした陰鬱な展開や、時間軸が入り乱れるようなSF的描写、凄まじい呪い演出に配信から数日はTwitterのTL上で阿鼻叫喚がこだましていた。
そんな『呪怨:呪いの家』で主演を務めたのは「荒川良々(あらかわよしよし)」
特徴的な見た目の個性派俳優で、『鴨川ホルモー』や『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』でもその存在感を示していたが、呪怨ではその独特な佇まいで映像に緊張・弛緩を与えメリハリを生んでいるように感じた。
そんな荒川良々の初主演作品は一般的には2008年公開の映画『全然大丈夫』だとされているが、違うのだ。
本日は荒川良々真の初主演作『ティンポン』を紹介する。
『ティンポン』/映画『ピンポン」(2002)スピンオフ短編作品
「おちんちんから綺麗な色の膿が出てさ、それでもまだ生きてるよ」
松尾スズキが演じる警察官の衝撃的な告白から始まる本作は、2002年に公開された実写映画『ピンポン』に登場するキャラクター、卓球部部長の「太田」のスピンオフ作品で、ピンポン本編で脚本を担当した宮藤官九郎が監督と脚本を担当している。
冒頭も含め、全編に渡ってピンポンの名シーンや名台詞のパロディを行いつつ、本編では描かれなかったキャプテン太田のインターハイ予選に向けた猛特訓の様子が描かれる。
原作からの大幅なキャラ改変から生まれたサイドストーリー
実写映画版ピンポンの原作と大きく異なる点として太田(原作では大田)のキャラクター像がある。
太田のキャラクターを原作とはデザインも内面も異なる柔和なもの(原作、アニメ版では結構いかつい)にしたことで、原作にはないコミカルなシーンを生み出している。それをさらに深め1本の作品として仕上げたのが本作『ティンポン』である。
本編のパロディ作品であると同時に、本編では描かれなかったキャプテン太田のスマイル(月本)に対する並々ならぬ思いやインターハイ予選に向けてアクマ(佐久間)に弟子入り志願する姿など本編を補強するような太田ファン必見の作品となっている。
実写化した際に、原作のキャラ改変が行われると往往にしてバッシングの対象になるが(ウルヴァリン: X-MEN ZEROでのデッドプールなど)、改変が受け入れられ、むしろ改変後のキャラクターイメージが定着するパターンが稀に存在する。
例えば、池袋ウエストゲートパーク(2000)では大幅なキャラ改変が行われ、窪塚洋介が演じたタカシは原作とは全くの別人だった。
原作小説の硬派でクールなイメージと異なる飄々とした窪塚版タカシは非常に人気のキャラクターとなり今でも愛される。
余談だが、10月開始のアニメ版では原作準拠のクールなキャラでいくようだ。
また、最近の例だと、実写映画『るろうに剣心』で武田観柳を香川照之が演じたことでキャラ自体の評価や扱いが変化したことも記憶に新しい。
原作では初期の小物な悪役でしかないキャラクターであったが、香川照之の激しい演技を気に入った原作者が後に実写映画の設定等を逆輸入したパラレルワールドを描いた「キネマ版」にて、武田観柳を原作以上に派手に描いた(「これが金の力だ!」と叫びながら弥彦を札束で殴るヤバいシーンが描かれた)。
そのような経緯を踏まえながら、現在連載中の「北海道編」でまさかの再登場を果たした武田観柳。
これも、改変後のキャラクターが受け入れられた結果と言える。
こうしたケースは演じた俳優の魅力・技術による部分が大きいだろう(もちろん脚本、演出等総合的な要因があるだろうが)。
ピンポンにおける太田のキャラ改変や、さらにスピンオフ制作にまで至った背景にも荒川良々の独特な俳優としての魅力が大きく影響していたのではないかと考える。
最新主演作『呪怨:呪いの家』をはじめ、多くの映画・TVドラマで活躍している荒川良々の原点と言っても過言ではないティンポンはピンポンBlu-ray・DVDの特典として付属している。
独特な魅力を持つ個性派俳優、荒川良々の魅力に迫りたい方はぜひご鑑賞を!
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