原作読んでるからこそビビる良アレンジの『岸辺露伴は動かない』

『岸辺露伴は動かない』

受信料の払い甲斐

 NHKに受信料を払うと言うのは基本気に食わない行為ではあるが……それでも時たま「受信料を払ってて良かった〜!」と思う時がある。例えばEテレだ。『デザインあ』や『考えるカラス』といった教育番組の絵面はモダンで、余計なものが無い。芸能人のワイプや別に必要がないコメントなどもない。芸能人を出すにしたって上品だ。私は瀬戸康史くんの『グレーテルのかまど』が大好きだが、あれも変な笑い声とかひな壇とかが存在しない、ただ瀬戸康史と、物語と、お菓子づくりを摂取させようという機能美に満ちた番組だ。金があると余計なことをしなくても済むようになるんだよ。
 さて、‘20年12月28日から三夜連続で放送された『岸辺露伴は動かない』も「受信料払ってて良かった〜!」と思わせてくれるタイプの素敵な番組だった。『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフをドラマ化した本作だが、最初の印象では「岸辺露伴に高橋一生、どうなんだ?」と思った。ちょっと顔が四角いし、おっさんすぎるように見えるぜ! 漫画の露伴ちゃんは女の子みたいに線が細いし、アニメでは櫻井孝宏だったんだぜ〜。ちょっとイメージ違うんじゃなのぉ〜? なんて思ってた。

©︎2020 NHK、ピクス
高橋一生演じる露伴ちゃんは最初はそれほどでもなかったが見れば見るほど馴染むッ。ときどきどちらかというと荒木飛呂彦にも見える瞬間があるのがふしぎだ

いやはやしかしこれがまったく見当違いだったね。あのギョロっとした目つき、嫌味な喋り方、ジョジョらしいオーバーリアクションで「これは岸辺露伴じゃん!」と思わされたわ。考えてみれば『岸辺露伴は動かない』はわざと曖昧にパラレル気味に描かれてはいるがジョジョ4部の後日譚とも言える内容。岸辺露伴も見慣れた姿より老けていて然るべきだ。現にドラマ劇中では露伴手がける『ピンクダークの少年』が第8部に突入したと言われている(『ジョジョリオン』意識か?)し、作中年代が2019〜2020年あたりらしい描写もある。だからいろんな面でこの露伴は正解だな! と思えたよ。

原作そのまんま≠いい映像化と思うのね

 よくマンガが実写映画化した時とか、アニメオリジナル展開が続いたときに「なんで原作通りやらねえんだよ」と言われたりする。まあそう言う気持ちは充分すぎるほどにわかるけど、私的には「原作に忠実すぎる映像化」って言うのもあまり好みではないんだよな。あ、あくまで原作既読の時ね。原作に忠実すぎる実写化は……ものすごーく演出とか声優の演技が優れまくっている、とかでない限りどうしても「ウン、よくできているなあ」という確認みたいな感じになっちゃうんだよな。そして数話見た挙句に「でもオチ知ってるしなあ〜」って見なくなってしまう。だからどちらかと言うと原作に要素をどう盛るのか。映像化するにあたってどう最適化していってるのかってのを評価したくなっちゃう。そういう意味だとジョジョのアニメは原作に忠実気味なので実は結構毎回「これは“確認”だな……」と思っちゃう方なんだよね。5部アニメの「ガッツのGってなんだよ」に対するアンサーとかはめちゃめちゃ嬉しくなっちゃったけど。

集英社 岸辺露伴は動かない 1より
原作でもドラマでもクライマックスにトウモロコシを食べることには違いないのだが……。ここで味わった視聴者なりの焦燥はまさに背後で「ゴゴゴゴゴゴゴ」って鳴ってる感じだった。おもしろかったなぁ……

 で、ドラマ版『岸辺露伴は』はここが完璧! 実はざっくりしたプロット以外はかなり大胆なアレンジが加わってるんだけど、そのどれもが実写ドラマとして、単発作品として成り立たせるために必要なものでありながら、原作既読でも「これは間違いなくジョジョだし岸辺露伴じゃん!!」と納得のいくもので、冒頭からすっごくワクワクさせられちゃった。役者のアクの強い演技、ともすればホラーに片足突っ込んでるカメラワーク、間の取り方・テンポのことごとくが納得&解釈一致で、読んだことある作品のドラマ化でありながら完全新作を摂取しいてるような幸福感に包まれたよ。特に舌を巻いたのがエピソード1「富豪村」のクライマックスで、原作からさらに一歩踏み込んだピンチに露伴が追い込まれ、初見組よりも原作既読組の方が「バッ、馬鹿なッ! 原作と違うぞォーッ! これじゃマナーが守れない! 逃げるんだ露伴ーッ!!」と汗だくになってしまう有様だった!  すごすぎる! こんなことってあるのかよ。そしてそうしたアレンジの結果、露伴の一番の名台詞「だが断る」を完璧なシチュエーションで発言させるなどもはや完璧という言葉すら安っぽい……。これはもしかして映像化にあたって複数人の力を結集することで、原作を“超えた”と言ってもいいんじゃないか……? と思えてしまうほど素晴らしい映像化だった。

 結局、マンガってのはコマ割りという特殊なフォーマットで水のように流れていく時間を切り取っていったものだ。だからアニメや実写化という形でそのまま映像化するのにはどうしても無理がある。そこをどう料理するか、どう違和感なく映像として視聴者に摂取させればいいのかに製作側は腐心することになる。そういった意味でドラマ版『岸辺露伴は動かない』はものすごい高レベルだと思うよ。この原稿を書いてるのは12月30日の日中。まだエピソード3「D・N・A」は見てない状態なんだけどきっと今夜もものすごく面白いものを見られるだろうと興奮してるよ。いや、ほんと受信料を払ってて良かった……というより倍払うから他のエピソードや完全新作エピソードも足してレギュラーシリーズ化してくれないかな〜!
 あ、見逃したってヤツは1月4〜6日にも再放送があるからそっちを見てみてくれよな。ほんじゃ。

【再放送予定】
1月4日 午後11:40~「富豪村」
1月5日 午後11:40~「くしゃがら」
1月6日 午後11:40~「D・N・A」

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