2004年に日本でも上映されたフランスのアニメ映画『ベルヴィル・ランデブー』が7月9日(金)よりリバイバル公開されます。2003年のカンヌ国際映画祭で特別招待作品として上映されただけでなく、フランス映画としては初のアカデミー賞の長編アニメーション映画部門にノミネートされました。
アート映画の雰囲気が強いですが、実は演出や設定がかなりブッと飛んだエンタメ性溢れるアニメ映画です。登場キャラの平均年齢がメチャクチャ高い、デフォルメされたキャラデザのクセなど、一度見れば頭から離れないこと必須です。
映画『ベルヴィル・ランデブー』あらすじ
孤独な少年シャンピオンが情熱を傾ける自転車レース。孫を不憫に思うおばあちゃんとの特訓が実を結び、遂にツール・ド・フランスに出場するもそこで、事件は起きる。マフィアに誘拐された孫を追って、愛犬ブルーノとともにシャンピオン奪還のための大冒険が始まる。協力してくれるのは伝説の三つ子ミュージシャンの老婆、腕力では敵わないが、人生経験と知恵そしてユーモアと愛で数々の難局を乗りきっていく。(https://child-film.com/Belleville/)
ちょっとあらすじの段階から不思議な展開となっていますが事実です。両親のいないシャンピオンは唯一自転車に興味を持ったことで、おばあちゃんと共にツール・ド・フランスを目指します。シャンピオンは自転車選手に、おばあちゃんはこの年でスパルタコーチとなりました。
しかしツール・ド・フランスの最中にマフィアが選手を誘拐し、ある目的のために選手を酷使することを目論見ます…。おばあちゃんは愛犬のブルーノと共に孫の行方を追うと、大都会ベルヴィルへとたどり着くのです…。
監督を務めるのは『イリュージョニスト』で監督・音楽を担当したシルヴァン・ショメ。『ベルヴィル・ランデブー』の主人公であるおばあちゃんは、監督にとって最初の短編作『老婦人とハト』の登場人物でもあり、このおばあちゃんの存在から今作が誕生したと明かしています。
またおばあちゃんと一緒に冒険する犬のブルーノは、カンヌ国際映画祭で「パルム・ドッグ(最高賞=パルムドールをもじった犬専用の受賞枠)」の受賞候補に挙がるなど、それぞれのキャラに魅力が詰まっている作品でもあります。
ツッコみながら見ると楽しいデフォルメされたキャラデザ
キャラデザを観るとおり、本作のキャラはみんな極端なデフォルメが施されています。おばあちゃんの孫・シャンピオンはツール・ド・フランス出場を目指すあまり、脚だけモッリモリの筋肉がついています。ほかにも愛犬ブルーノは胴体だけ丸々太って脚はカリカリの細さ、おばあちゃんもよく見ると、片足だけギャル顔負けの厚底靴です。
個人的に一番ツボだったのは肩幅が異常に広いマフィアたち。肩幅の広い絵をTwitterにアップしている某イラストレーターを思い出さずにはいられないフォルム…。
面白いのがこれらのデフォルメはただのデザインでなく、きちんとその形状に合わせた演出がなされる点です。おばあちゃんはシャンピオンの脚の筋肉に合わせたケアを行うし、おばあちゃんの厚底靴もキチンと活躍する場面がありました。さらにマフィアの肩幅に至っては、その幅の広さが災いするような場面まで…。
正直なところ、最初はこのデフォルメが個人的に合わずしんどいかも…と思っていましたが、ユニークな演出のおかげで、最終的にはこのデザインじゃないと物足りなさを感じるようになっていました。
実写、レトロ、なんでもござれ
2Dの手描きアニメだからこその魅力が詰まっている『ベルヴィル・ランデブー』ですが、一つの作品の中に飽くなき創意工夫が詰まっています。
OPではいきなり昔のライブ映像として伝説の3姉妹シンガー「トリプレット」による歌唱シーンが流れ、過去という設定を最大限に生かすためレトロなアニメ調になっていました。本編とはかなり絵のタッチが変わっており、「トリプレット」のメンバーは現在と過去では指の本数まで異なっています(これもデフォルメによる影響)
他作品で例えると、ゲーム「Cuphead」の絵に近いです。また、テレビの映像ではあえて白黒の実写映像がはめ込まれるなど、手描きに縛られない様々な演出が見られました。
おばあちゃん子はマストで見るべし
そして最大の推しポイントが、おばあちゃんと現在の「トリプレット」3姉妹によるおばあちゃんの4人組による大活劇です。このおばあちゃんたち、マジで強い…。なんてったって後期高齢者だけで孫をマフィアの拠点から救出しようとするのですから…。
終始ニコニコの「トリプレット」の3人ですが、殺傷能力の高すぎる武器でマフィアを蹴散らすシーンには開いた口が塞がらなくなりました。どこで手に入れたの、その武器…。
さらにはカー(?)チェイスまでする破天荒なので、キャッチコピーの「ピンチもへっちゃら。愛さえあれば」に偽りなし。(筆者をはじめ)おばあちゃん子はガチで見てほしい活躍が繰り広げられます。おばあちゃんが背を向けているポスタービジュアルも、映画を観た後に見るとその強さにひれ伏すことでしょう。
とにかく内容や設定が斬新すぎて、本当に20年近く前の作品なのか疑ってしまうほどブッ飛んでいる『ベルヴィル・ランデブー』。実はこの作品、音楽も最高にカッコいい(特にエンドロールで流れる曲)
でも「スウィング・ジャズ」ということ以外うまく言語化できない…と歯がゆい思いをしていたのですが、公式サイトでサントラが試聴できました。(URL)(音楽を手掛けるのは『アップサイドダウン 重力の恋人』『静かなる叫び』など、カナダ映画の音楽を担当するブノワ・シャレスト)
サントラいいかも…!と思った人もぜひ見てみて下さい!
映画『ベルヴィル・ランデブー』作品情報
監督・脚本・絵コンテ:シルバン・ショメ
音楽:ブノワ・シャレスト
美術:エフゲニ・トモフ
プロデューサー:ディディエ・ブリュネール
キャスト:ジャン=クロード・ドンダ、ミシェル・ロバン、モニカ・ビエガモニカ・ビエガ
公開日: 2021年7月9日
製作年:2002年(日本初公開:2004年12月18日)
上映時間:80分
制作:フランス・ベルギー・カナダ合作
原題:Les triplettes de Belleville
配給:チャイルド・フィルム
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