騙されたと思って最後まで観てくれ!『のぞみのはなしをきいてください』

『のぞみのはなしをきいてください』という作品がある。
2019年12月22日から12月31日までYoutubeに毎日投稿され、全11本のシリーズ動画が公開された。
チャンネル概要には「一兆年前につくられた人工知能の『のぞみ』です☆」とだけ記されている。

まず1本目の動画を観ていただきたい。

多くの人が「最近流行りのVTuberね」「こういうのよくいるよね」といった感想を持つと思う。
Youtubeでよく見るタイプの編集や聞き覚えのあるSEに抵抗を覚えた方もいるかもしれない。
ここが本作の面白いポイントで、逆に勿体無いポイントでもあると思うのだが、1話のこうした構成自体がトリックなので「ウッ!」と思った人も最後まで観てくれ!全部観ても20分弱なので…!

また、3Dモデルのクオリティの高さに驚いた方もいるかもしれないが、こちらに関しては本作の背景とも関わることなので後ほど触れる。

翌日公開された2本目の動画も同様のテイストだが、3本目はこれまでと毛色が変わりややシリアスな雰囲気で自身が殺されることを視聴者に告げるのぞみの様子が描かれる。

https://youtu.be/RSCh-n38G64 より

6本目の動画にて、デザインが変わったのぞみは文明をコントロールする役割があるが失敗してしまったため地球の文明がリセットされてしまうという警告を人類に発する。

https://youtu.be/nuJT2Nx3t2w より

つまり6話にて本作はSF的な背景を持つストーリー系のVtuber(マシーナリーとも子や有栖川ドット等)作品であり、これまで度々描かれた不穏な空気はそうした背景によるものだと分かる。

https://youtu.be/07jzO3Kc7Rw より


続く動画でも不可解な内容や、編集担当として名前が出る「のぞみ2号」の不穏なメッセージ等が描かれるが、そうしたSF設定由来のものだと考えながら観進めると10本目の投稿「#10 最後の動画☆」(実際の最後は#11)で本作の真の構造が明らかになる。

ここから先はネタバレになるので、できるならば先に#10まで観てから読んで欲しい。

https://youtu.be/LytjdT-KBt8 より

唐突に世界の終わりを告げるのぞみ。
以前触れられていた「文明のリセット」が行われたのだろうと思いつつその辺りの説明がなされるのかと思いきや、そうしたものは無くのぞみの抽象的なメッセージによって前半終了。

https://youtu.be/LytjdT-KBt8 より

後半、前半の終わりから続くのぞみの様子が映し出され「読み終わりました」と告げる。
単なるメタ的な要素かと思いきや、動画にニュースのテロップが重なる形で、本作の全貌が明らかになる。

『のぞみのはなしをきいてください』チャンネルに投稿されていた動画は、とある狂人が女性を監禁しVTuber活動を無理やり行わたもので、「最後ののぞみ」に至るまでの2人ののぞみ(の演者)は既に殺害されているというものだ。

#11では犯人と思われる「のぞみ」が登場し、自分のことを理解してくれなかったために2人を殺害したと話し、「のぞみのハナシをきいてもらいたかっただけ☆」のテロップで幕を閉じる。
それが視聴者に向けてのことなのか、監禁した女性たちに対してのことなのか…描写通りのホラーとしての怖さも備えつつ、ネット人格と実社会での人格の乖離のメタファーやクリエイターの本音のようにも取れる最後の動画。#11に関してはホラー的には蛇足感が否めないが、本作に込められた様々な意図を感じることができる。

#10で明らかになった、「よくあるYoutube動画が画面外で全て殺人鬼に強要され演技していた」という設定によって#2で「酸っぱい飲み物」を飲んだ際の本当に辛そうなリアクションや「お母さん…」と漏れ出た言葉、長台詞を噛んでしまった際の編集でのツッコミ、途中で3Dモデル・声の変更があったこと等「Youtubeあるある」の全てがホラー演出に変わり非常に面白い。

これを1本の作品ではなく分割し、Youtube動画としてのフォーマットで公開することで、リアルタイムでの驚き・反響を作ろうとした狙いは伝わってくるし、本当に面白い試みだったと思う。実際、1話のみからこのオチを読み取るのは不可能だろう。本作の公開がもっと早かったら…事前の周知がもっと徹底されていれば…もっと多くのリアルタイムの反応があったのではないだろうか…と考えてしまうが、リアルタイムでなくても面白い作品なので今からでもぜひ多くの人に観てもらいたい。

『のぞみのはなしをきいてください』制作者は?

ほぼ情報がない本作だが、制作はCGを利用したアニメーション制作会社の「株式会社クラフタースタジオ」であることがクラフタースタジオのHPから判明した。
参考リンク
アニメ「DRIFTERS」や「天気の子」等のCG制作に携わる、大手制作会社が仕掛け人だったわけだが。
これでのぞみの3Dモデルのクオリティの高さにも納得である。

視聴者の見えていない部分では何が行われているか分からないというのは映像媒体の本質だと思う。
それを流行りのモチーフによって表現した『のぞみのはなしをきいてください』騙されたと思って最後まで観てくれ!

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