『獣の棲む家』(原題:His House)
10/30よりNETFLIXにて配信開始された『獣の棲む家』。
2020年1月開催のサンダンス映画祭で初公開され、ロッテン・トマト(Rotten Tomatoes)にて批評家支持率100%という高評価を叩き出した。
監督のレミウィークスは本作がデビュー作にも関わらず、非常に高い評価を獲得しており、国内の映画ファンも配信を待ち望んでいた1作。
ジャンルとしては、新居に現れる霊の存在に脅かされる所謂「引っ越し系」や「家系」と呼ばれる類のホラー作品で、邦題的にも同じく家系の「悪魔の棲む家」を想起させる。
こうした居所を舞台にしたホラーは「逃げられない」ため、一気にサクッと殺すような手法ではなく、徐々に住人が心身に支障をきたす様を描くのが鉄板であり、本作も徐々に狂っていく夫婦の姿が描かれる。
本作では、南スーダンでの紛争から辛くも逃れ、イギリスに亡命した夫婦の受難を描いており、それを「逃げられない」理由にストーリーが展開していく。
夫婦の前に現れる謎の悪霊や、死んだ娘の霊に殺されそうになるような霊障に加え、そもそも与えられた住居はボロボロで、街の住人からの当たりも厳しいといった現実的に辛い状況が相まって夫婦を蝕み、次第にお互いを攻撃し始めたり、戦火の南スーダンに帰ろうと言い始めたりと正気を失っていく。
この辺りは、よくある引っ越し系ホラーに『ゲット・アウト』(2017)や『アス』(2019)で見られたような、人種差別にフォーカスした社会風刺要素をミックスした描き方をしつつも、そこまで目新しさは感じず、霊の出現もビックリ系でくどさを感じるが、本作の本質は「何故この夫婦が悪霊に狙われるか?」という部分にあり、核心に触れるシーンで感じられる恐怖体験はかなり新鮮で、これまで味わったことないような衝撃を受けた。
単に因果応報といった言葉では片付けられないような、人が抱える業の深さと、社会問題の苛烈さを引っ越し系ホラーを題材に描いたのは新鮮で、93分と観やすい長さのためホラー好きのみならず万人にオススメできる。
但し、序盤の展開やホラー演出については、ホラー映画ファンは「もう見た」な展開が続くため少し退屈かもしれない。
その辺りの退屈さを差し引いても、真相を知った際の衝撃は大きいためNETFLIXユーザーにはぜひ観て欲しい1作。
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戦火で荒廃した南スーダンから命からがら逃れて英国にやって来た若い難民カップル。保護を認められ、小さな町のある家を住居としてあてがわれるが、そこには見えざる獣が潜んでいて…。