「偉大なチャンピオンになるには、自分を最強と思え。最強でなくてもフリをしろ」
ボクシングのヘビー級チャンピオン、モハメド・アリはそういった。
これはボクシングに限らず、日々の生活にも当てはまる。
理想の体型を手に入れたい。仕事で成功したい。素敵な恋人に出会いたい。自分に自信が欲しい。
そんな気持ちを全部、一人の人間に詰め込んだコメディドラマ映画がある。
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』だ!
映画『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』概要
監督・脚本:アビー・コーン、マーク・シルバースタイン
キャスト:エイミー・シューマー、ミシェル・ウィリアムズ、ロリー・スコベル、エミリー・ラタコウスキー、エイディ・ブライアント、ビジー・フィリップス、トム・ホッパー、ナオミ・キャンベル、ローレン・ハットン
製作:2018年(アメリカ)
上映時間:110分
原題:I Feel Pretty
製作陣には主演のエイミー・シューマーのほか、Netflixオリジナル『ベビーシッター』『リム・オブ・ザ・ワールド』の監督マックGも名を連ねている。
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』キャスト・スタッフ
主演のエイミー・シューマーは、その体型を活かしたコメディエンヌとして知られており、歯に衣着せぬスタンダップコメディも有名。
その昔、カニエ・ウエストとキム・カーダシアンの前で、わざと派手に転ぶも無視されるなど、体を張った芸風にも定評がある女性だ。
映画出演作では、主演兼脚本を務めた『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』(15)が面白く、キャストも謎に豪華なのでおすすめ。
めっちゃケバいティルダ・スウィントンとか見れます。
また、レネーが尊敬する職場のCEO、エイヴリー・ルクレアをミシェル・ウィリアムズが熱演。
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)や『マリリン 7日間の恋』(11)などでアカデミー賞にノミネートした、れっきとした実力派である。
本作では異常に声が高く、そのせいでバカっぽく思われることがコンプレックスになっている女性を演じた。意外とハマっているのがまたすごい。
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』の吹き替えに渡辺直美が参加
映画『アイ・フィール・プリティ! 』では、レネーの声を渡辺直美が担当している。
吹き替えの上手い下手はさておき、エイミー・シューマーと同じく芸人として活躍する、渡辺直美の”本人感”が強く出ているのは、むしろ吉だと感じた。キャラに説得力が増しているのだ。
(ということは、渡辺直美で本作をリメイクしても面白いのでは…?)
なお、本編では放送禁止用語も飛び出すので、地上波では聞けない渡辺直美のセリフも堪能できる。
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』あらすじ(ネタバレなし)
『アイ・フィール・プリティ!』は開始たった3分で、1日分の不幸が襲いかかる展開から始まる。
自分に自信のないレネーが、意を決してソウルサイクル(フィットネスバイクを使ったエクササイズをするジム)に参加するも、恥に恥をかきまくる。
さらに、別日にはフィットネスバイクの故障で頭を強打し、気絶する。
意識を取り戻し、鏡を覗くと…そこには理想の姿に変身した自分が映っていた!
…しかし、そんなふうに見えているのはレネーだけ。
そのほかの登場人物、そして観客も含め、終始勘違いしているレネーを見続ける。
いわば2時間近くかけて、アンジャッシュのコントを見ているような感覚を味わえるのだ。
『アイ・フィール・プリティ! 』の良いところは、「レネーには自分がこう見えています」というような、彼女目線の美貌が一切映らないところ。
終始エイミー・シューマーが、全身全霊で理想の体型を得た”テイ”の演技を見ることができる。
自分が理想のボディを手に入れたことで、これまでにないほどの自信に満ち溢れるレネー。
憧れの化粧品会社で勤めるも、部署は窓際族同然の通販部門だったレネーが、堂々と本社の受付嬢に応募する。
異性から声をかけられるとナンパと勘違いして、連絡先の交換に(強引ながら)成功する。CEOのエイヴリーに気に入られる。ミスコンに飛び入り参加する。セックスのときに明かりをつける。
とにかく人生のあらゆる面でポジティブな行動をするようになる。
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』あらすじ(ネタバレあり)
しかし、すべてが順調のように見えたレネーにも、ある問題が発生する。
自分に自信がついたことで、自信がない人を無意識のうちに見下していたのだ。
レネーは仲の良かった友人から意識高い系の友人に乗り換え、次第に嫌われてしまう。
さらに連絡先を交換した草食系のカレと上手く行っているのに、CEOの弟に好意を持たれると、うっかり浮気しそうになる。
そんな彼女に天罰が下るがごとく、大事な取引先との商談前に頭を強打し、自分の姿が戻ってしまう(もともと変わっていなので、悲劇のシーンすらシュール)。
自信をなくしたレネーは商談をすっぽかし逃亡。慰めてくれる友人もいない。姿が戻ってしまったので、カレに合わす顔もない…。
そんなレネーの元に、CEOのエイヴリーが、商品発表会を成功させる自信がないと悩んでいると知る。
意を決してレネーは商品の発表会に飛び入り参加。
新商品が「自分のように自信がない女子の味方である」ことをプレゼンする。(ここで初めて、レネーは今まで理想の体型を手に入れていなかったと気づく)
これまで美人モデルしか起用しなかった会社が、レネーのような女性に商品を説明させたことで、発表会は大成功。
レネーも勘違いから立ち直り、友達やカレとの関係も修復できた。
もちろん、勘違いから覚めた後も、ソウルサイクルには通い詰めている。
一見、完全にイタい人が暴走しているように見える本作。
しかし、すべてレネーの“勘違い”による暴走というのがミソ。
本当になにかのきっかけで、理想の自分を手に入れていたら、ここまで説得力のある映画にはならないだろう。
あくまで”勘違い”だからこそ、「自分も、考え方次第で自信が持てるかも」と元気を与えてくれるのだ。ここでもまた、モハメド・アリの名言が思い返される。
また、女性向けの作品に見えて、レネーの彼氏もまた、男社会に馴染めず自信をなくした男性である。
そんな彼氏がレネーの自信に感化される姿は、男性にも刺さる内容となっている。
いろんな意味でベッドシーンに定評のあるエイミー・シューマー
とにかく本作は、元気になる要素とエイミー・シューマーの魅力が存分に詰まった作品だ。その中で特におすすめしたい場面は、下世話と思われるかもしれないが、レネーと草食系カレのベッドシーンである。
自分のボディに自信たっぷりのレネーは、わざと電気をつけてセックスをし、最中には鏡に映った自分に酔いしれるという離れ業を成し遂げている。
あまりの自信満々なレネーに、草食系カレもただただ脱帽。
カレは「男社会」で生きる自信がないので、常に自信に溢れるレネーを尊敬しているのだ。笑いつつもほっこりするシーンである。
その昔、バイト先の先輩が「笑ってセックスできる関係が一番良い」と話し、筆者は童貞ながら神妙な顔で聞いていた。この作品で、その話が証明されたのだ。
ハリウッド映画にありがちな、「マッチョな男が女性を守る」というテンプレを壊している点も好感が持てる。
ちなみに、エイミー・シューマーが主演の『エイミー、エイミー、エイミー〜』でも、行為中に掛け声をかける体育会系男子をディスったベッドシーンがある。
こちらも笑えるので、気になる人は是非見てほしい。
…なんだかきわどい部分で熱を帯びてしまったが、『アイ・フィール・プリティ!〜』は全年齢作品なので、どなたでもお楽しみいただけます。
amazon primeでも見放題作品となっている(2020年9月時点)ので、気になった人は是非チェックしてみて下さい!
この映画を見れば、あなたは人生のチャンピオンだ!