もっと!
もっと夏を味わいたかった!
なんて、日が短くなってきた夏の終わりを感じている9月にもってこいの映画が公開をスタートしました。その名もアニメーション映画『夏へのトンネル、さよならの出口』です。
2022年9月9日(金)より、全国劇場公開となった本作は、今年夏らしいことができなくて悔しく思っている人にとっても格好の、夏を感じられる映画となっています。
そもそも『夏へのトンネル、さよならの出口』とは?
『夏へのトンネル、さよならの出口』というタイトルに聞き覚えのある人も居るかもしれませんが、本作は2019年に刊行された八目迷(はちもくめい)さんの小説が原作です。
もともと八目迷さんは、本作の元となる作品を小学館ライトノベル大賞に応募しており、第13回のガガガ賞と審査員特別賞のW受賞を果たすという快挙を成し遂げました。この年は、『クラスメイトが使い魔になりまして』という作品も同じくガガガ賞と審査員特別賞のW受賞を果たしており、方向性の違う二作品に上下をつけるべきか等の議論の末、大賞不在のW受賞作品2作という賞の数で報いるという異例の結果に至った、すでに一つ逸話を残している作品です。
そんな『夏へのトンネル、さよならの出口』を、『デジモンアドベンチャーLAST EVOLUTIONN 絆』の田口智久(たぐち ともひさ)監督と、『映画大好きポンポさん』を彩ったアニメーション製作会社CLAPというこれまた面白い布陣で長編アニメーション映画として製作しました。
主人公は、父親と二人暮らしの高校二年生の塔野カオル(声・鈴鹿央士)と、東京から転校してきた同じく高校二年生の花城あんず(声・飯豊まりえ)の二人。なんでも欲しいものが手に入るという“ウラシマトンネル”を発見した二人は、なんども検証を重ねてお互いの欲しいものを手に入れようと試みるのですが、仲が深まっていくに連れて心境にも変化が生まれていくという物語になっています。
物語の舞台が2005年という懐かしさ!
本作で注目して欲しいのが、本作の舞台が2005年に設定されていることにあります。
今から15年以上前という絶妙な昔具合が、30代〜40代ぐらいの人にはディテールにおそらく懐かしく感じられるのではないでしょうか。
まずは登場人物が使用している携帯電話。
いまやスマホの代名詞のような状態のiPhoneも、日本での販売は2008年からだったので、まだ存在しませんし、もちろん2011年にリリースされたLINEも存在しません。そんな時代に主人公たちが連絡交換をする方法といえば“赤外線通信”ですよ。Airdrop(エアドロップ)やNearby Share(ニアバイシェア)などデータ共有が気軽にできる今を思うと、平然とスマホを向かい合わせて連絡先を送受信するあの一連の動作がすでに懐かしいです。
また、主人公のカオルが愛用しているのがMDプレイヤー。
00年代中期は今のように音楽の定額聴き放題サービスも普及していなかったので、CDからMDに録りなおしたり、MP3プレイヤーといった音声ファイルの再生機器を用いて、音楽を携帯していた時代がありました。いまやスマートフォンがその役割を担ってくれているので、音楽プレイヤーという存在自体にもひと昔前の時代を感じます。こういった細かな当時の時代感が再現されているので、当時学生だった人にはそのディテールを見かける度に懐かしいと感じるのではないでしょうか。
ここに青い空、広大な海、二人きりの電車のホーム、無数の向日葵という、夏を感じずにはいられないシチュエーションが重なってくるのだから『夏へのトンネル、さよならの出口』は恐ろしい。当時学生だった人間をノスタルジーという役満で本気で飛ばしに来ています。
しかも、いたずらにこの2005年に時代が設定されているのではなく、この微妙な時代の違いが実はしっかり物語に活きてくるようにできているのも、また上手い。
どの年代にも晴れた気持ちで楽しめる作品となっているので、「この年代の人じゃないと楽しめない」みたいな作品じゃないので、もちろん万人にオススメできる作品です。ただ、特に作中の舞台である2005年に学生をやっていた人には刺さりやすいことは間違いないです。ぜひ今年の夏だけでなく、あの頃の夏までをも、もう一度取り戻しに行くぐらいの気持ちで映画館に足を運んで欲しい一本となっています。
『夏へのトンネル、さよならの出口』
9月9日(金)より、梅田ブルク7ほか全国ロードショー!
(C)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会
公式サイト:https://natsuton.com/
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