映画『相撲道ーサムライを継ぐ者たちー』レビュー!初心者も楽しめる「相撲エンターテイメント」爆誕!

以前ムービーナーズでも紹介していたドキュメンタリー映画『相撲道ーサムライを継ぐ者たちー』

そのタイトル通り、世界初(!?)となる相撲のドキュメンタリー映画だ。
相撲ファンのために制作したような玄人向けタイトルにみえるが、実は素人が見ても面白い映画である!

筆者自身も、相撲の知識は殆どない。
単純にドキュメンタリー映画が好きなので鑑賞したのだが、そんなふわふわな動機でも楽しめる作品だった。

激しすぎる稽古シーンをこれでもかと流すだけでなく、お茶目なお相撲さんの一面もしっかり盛り込む、ガチの「相撲エンターテイメント」映画がここに誕生した。

↑筆者の感想ツイートに返信してくれた『相撲道』の坂田栄治監督。
監督の言う通り、本作は「相撲の魅力を沢山の人に知ってほしく制作した」作品だった。

『相撲道ーサムライを継ぐ者たちー』概要

日本人にとって親しみのある国技「相撲」をあらゆる側面から捉える『相撲道』。

境川部屋と高田川部屋に約半年間取材し、信じられないほど過酷な稽古や、本場所での激しい戦いが映し出される。

常に勝つこと、強くあることを求め続ける、まさにサムライのごとくストイックな力士の姿を徹底的に捕えたドキュメンタリーである。

(C)2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会

しかし、そのストイックな姿とは反面に、力士たちの何気ない素顔やお茶目な一面も捉えている。
エンターテイメント性も高く、良い意味で「敷居の高くない」作風となっていた。

監督はバラエティ番組「マツコの知らない世界」の総合演出を務めた坂田栄治
映画にも挑戦したいという意思から、ドキュメンタリー映画を制作した。
制作のきっかけも、2017年に「マツコの知らない世界」で”相撲メシ”の回があり、当時担当していたプロデューサーに「相撲の朝稽古が見たい」とお願いしたことがはじまりだとか。

映画は出身力士も多いハワイで開催された「ハワイ国際映画祭」でも出品されるなど、海外からも注目を集めている。

また、ナレーションは「IPPON グランプリ」の「IPPON!」でおなじみの遠藤憲一が担当した。

ストイックすぎる『相撲道』。想像を絶する「朝稽古」とは

(C)2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会

2018年12月末。世間はクリスマスで、カップルや家族連れがイルミネーションのきらめく場所で過ごす中、力士たちは激しい稽古にひたすら取り組む。

「毎日が交通事故」と力士がインタビューで答えているように、ぶつかり合うときの音が凄まじい。
特に頭部がぶつかり合うときの音は、聞いているだけで痛みを想像してしまう。

土俵だけが中心にある部屋で、大勢の力士たちが取り組む稽古の迫力がカメラ越しに伝わってくる。
ほどんどの力士が体から湯気を出し、稽古とはいえ土俵からはじき出されると本気で悔しがる姿も見て取れる。皆、稽古とはいえ命がけだ。

(C)2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会

特にすごいのが、稽古の順場を取り合うやり取りである。
お行儀よく稽古の順番を待つのではなく、「次は俺の番だ!」と言わんばかりに全員の力士が土俵に詰めかける。
順番を勝ち取るのさえ命がけ。これはなかなか他のスポーツでは見られない風景である。

もともと相撲は武士が組討をする上で必要な体術として扱われた背景もあり、今なお武士特有のストイックさが息づいていた。

意外と知らない?実はお茶目な『相撲道』の世界

(C)2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会

とはいえ、ずっと稽古や試合などシリアスな場面が続くと、視聴者も疲れてしまう。

そこで「マツコの知らない世界」でキャリアを積んだ、監督の腕の見せどころである。
ストイックな力士の表情とは異なる、ちょっとお茶目で意外性のある題材も楽しめる内容も満載だった。

そのひとつ、『相撲道』では過酷な練習とはべつに、力士たちが苦痛に悶えるシーンがある。整骨だ

青空の下、満面の笑みでママチャリを漕いで整骨院へ向かう力士たち。
あれだけ稽古や試合でぶつかり合っても土俵に立ち続ける彼らだが、1人の整体師にかかればたちまち音を上げてしまう。

しかし同時に、これだけ入念に体のケアをしなければ、稽古中に大怪我しかねない。
ケアを施しても本場所でケガをするシーンも見られ、常に危険と隣り合わせであることを再確認させられる。

さらに作中ではケガをしながらも、弱点を知られないためにテーピングなどの処置を施さずに試合に挑むシーンがあったが、これは同じ部屋の力士も驚くことだった。

他にも稽古部屋の日常風景を紹介したり、本場所では会場に入る力士たちの着物姿をファンがひと目見ようと「ランウェイ」状態になっているなど、相撲のルールや常識を知らなくても楽しめたり、知っていればもっと面白くなる要素を紹介している。

(C)2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会

「マツコの知らない世界」でも紹介された「相撲メシ」にも通ずる、ちゃんこ鍋のクッキングシーンも収録。

大量の食材を手際よくザクザク切っていく音がたまらない。監督はYouTubeもやっているので、ぜひ「【料理音】ちゃんこ鍋ASMR動画」とか制作してほしい。

監督が生粋のエンターテイナーだった件

実は『相撲道』で度肝を抜かれたシーンは稽古や本場所だけではない。

それは試合前の力士たちに激励を送るべく、監督が焼き肉をごちそうするという件だ。

「そんな…(経済的に)死ににいくようなものだぞ…!」という筆者の心配を他よそに、どんどん肉と白米(6升)を胃袋に流し込む力士たち。
絶え間なく入るオーダーで殺伐とする厨房。生まれて初めて見る長さのレシート。言葉では表せない監督の表情…。

こうした遊び心のあるドキュメンタリー要素を盛り込むのも、監督が生粋のエンターテイナーである証拠だ。
相撲にあまり興味のない人でも、「力士がどれほど食べるのか?」は意外と気になるのではないだろうか?

もちろん、お会計がいくらになったのかは、最後の一桁まではっきりと分かるようになっている。気になる人は、是非本編を見て(と監督の表情を含め)確かめてほしい。

映画『相撲道』は、相撲を知らない人ほど楽しめる

(C)2020「相撲道 サムライを継ぐ者たち」製作委員会

映画『相撲道』は、相撲をあまり知らな人でも楽しめるドキュメンタリーだ。

筆者も「土俵からでたら負け」程度の知識しかないまま鑑賞したが、勝利を求める力士の姿やマインド、意外な力士の素顔を見れるなど、好奇心をそそられる内容となっていた。

ルールや本場所の仕組み、相撲の歴史は必要最低限にとどめており、ドキュメンタリー特有の「お勉強感」があまりないのも良い。

テレビや試合だけではわからない、相撲の魅力を余すこと無く伝え、見終わった後にはその意外な一面を人に教えたくなるような良作だった。

映画『相撲道』作品情報

公開日:2020年10月30日
出演:境川部屋 髙田川部屋
監督/製作総指揮:坂田栄治
プロデューサー:下條有紀/林 貴恵
コーディネートプロデューサー/劇中画:琴剣淳弥
制作:PRUNE
制作協力:日本相撲協会 Country Office
製作:「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」製作委員会
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン 
配給協力:日活

2020年/カラー/シネマスコープ/5.1ch/104分
©2020「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」製作委員会
公式サイト:sumodo-movie.jp 
公式Twitter:@sumodomovie

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ヤマダマイ
TS○TAYA→ミニシアター勤務を経て映画ライターをやっています。 謎な映画まとめ記事や、ネタ系ドキュメンタリー映画が好きです。 インドアなのに映画Tシャツを見ると買ってしまうのが最近の悩み。 あと映画ライターと名乗っておきながら、考察記事を書くのは死ぬほど苦手…。(観るのは大好き) Twitter→@serial_mai

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