映画『藁にもすがる獣たち』レビュー!皆でつなごう!死のリレー

作家・曽根圭介の小説「藁にもすがる獣たち」が韓国で映画化されました!
原作も映画も、偶然見つけた大金(日本円にしてほぼ1億)によって、運命が狂わされていく人々を群像劇で描いています。

2月19日にも日本で公開される本作は、ダークな群像劇として、韓国映画が持つアングラな雰囲気とマッチした怪作となりました。

これまで、韓国では日本の小説が映画化されるケースは幾度かあり、東野圭吾の原作を映画化した『白夜行 白い闇の中を歩く』(09)『さまよう刃』(14)や、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』(18)などがあります。

今回公開される『藁にもすがる獣たち』も、日本原作の映画化として、新たな代表作になると感じました!

映画『藁にもすがる獣たち』あらすじ

失踪した恋人が残した多額の借金を抱えて金融業者からの取り立てに追われるテヨン、暗い過去を精算して新たな人生を歩もうとするヨンヒ、事業に失敗してアルバイトで必死に生計を立てているジュンマン、借金のために家庭が崩壊したミラン。ある日、ジュンマンが勤め先のロッカーの中に忘れ物のバッグを発見する。その中には10億ウォンもの大金が入っていた。地獄から抜け出すために藁にもすがりたい、欲望に駆られた獣たちの運命は――。果たして最後に笑うのは誰だ!?

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藁にもすがる獣たちをご紹介

本作には明確な主人公は存在せず、大金によって多くの人間の運命が狂わされていきます。結構な登場人物の数なので、まずは簡単にまとめてみました。

ジュンマン(ペ・ソンウ)

© 2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED. ©曽根圭介/講談社

事業に失敗して、痴呆の母、妻と暮らす男。ホテルのサウナでアルバイトするも、ムカつく上司に理解を得られない日々。ひょんなことからロッカーにあった大金を見つける。

テヨン(チョン・ウソン)

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恋人に失踪されたうえに、借金の保証人になっていたことで尻拭いをしている勤め人。
ただし、本人も見かけによらずだらしない性格の様子。

ミラン(シン・ヒョンビン)

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騙されたうえに借金を抱えてしまい、夫との家庭が崩壊した若き女性。
DVに耐え、風俗店で働きながら借金を返そうとするが…。

ヨンヒ(チョン・ドヨン)

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後ろめたい過去を精算しようとする女性。ある会社の社長を勤めている。

ジンテ(チョン・ガラム)

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中国から出稼ぎに来た青年。風俗店でミランに会い一目惚れする。DVを受けているミランにある計画を提案する。

ドゥマン(チョン・マンシク)

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テヨンの借金を取り立てる闇金の社長。基本ヘラヘラしているが、地獄の果まで借金を回収するガッツがある。日本なら「ずん」のやすに演じてほしい顔立ちをしている。

スンジャ(ユン・ヨジョン)

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ジュンマンの母。病気とはいえ、おむつを履くことを拒否して垂れ流した挙げ句、義理の娘に後始末をさせるという偏屈っぷり。しかし終盤で結構良いことを言ったりする。

この他にも、ジュンマンの妻や、ガラの悪いテヨンの友達「デメキン」、ミランの夫、みやぞん似の殺し屋など、様々な人間が大金に運命を翻弄されていきます。

相関図があればこの群像劇を理解しやすいのですが、作品を鑑賞する前に見てしまうと面白さが半減してしまうのです…。(後ほど解説します)

みんなでつなごう!死のリレー

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映画『藁にもすがる獣たち』は、金を巡って大勢が心理戦を繰り広げたり、殺し合ったりする映画とは少し異なります。

大金を手にした人間の運命が軒並み狂わされる、ダークなヒューマンドラマとしての側面もあるのです。

もちろんサスペンス要素も強いのですが、大金の持つ人物があまり緊張感のないキャラだった場合、妙なギャップが生じてシュールな雰囲気になることも。

そして最大の魅力は、大金の入ったバッグを手にした人間の多くが、消えたり死んだりしていくという運命…。まさに大金をバトンにした、死のリレーが繰り広げられるのです。

無論、かばんを受け取った全員が死ぬわけではないし、かばんを受け取らなくても助かる保証はありません…。

誰が最後まで生き残り、大金を手にするのか、ギリギリまで分からない展開も面白い作品です!

人の死にワクワクしてしまい、物騒な好奇心がそそられる

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映画『藁にもすがる獣たち』は、6章に渡って金をめぐる人間模様を描きますが、必ずしも時系列通りには描いていません。

先ほど登場した人物が、次章では行方不明になったり、殺害されていたりする、なんてことも…。(人物紹介で相関図は見ないほうがよいと言ったのはこれが理由)

そのため「誰が大金を手にするのか?」と同じくらい、「なんでアイツ死んだんだろう…」という、物騒な好奇心をそそられることになります。
「どんな死に方したのかな〜?」という具合に、人の死を想像しながら見ると楽しいかもしれません。

また、章ごとに明らかになる、それぞれの人物の関係性も見どころのひとつ。
なんの接点もない人物が、章が進むごとに意外なつながりが明らかになる…。
バラバラに見えた物語が1つにまとまっていく快感を味わえます。

まあ、気持ちいのは視聴者だけで、劇中の人物はずっと地獄のような展開が続くのですが…。

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どうやって10億ウォンにもなる大金が生まれたのか?
誰が、なぜ、コインロッカーに置き去りにしたのか?
最後に大金を手にするには誰なのか?

すべての疑問が時系列を入れ替えて明かさえる巧みな展開や、最後の最後まで誰が大金を手にするのかわからないストーリーは、エンタメとしても秀逸。
物騒なテーマながら、楽しめる要素が満載の映画でした!

本作を見れば、そのへんに大金が落ちてても拾わなくなること必須です!

映画『藁にもすがる獣たち』作品情報

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公開日:2021年2月19日(金)

監督・脚本:キム・ヨンフン
原作:曽根圭介「藁にもすがる獣たち」(講談社文庫)
出演:チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、チョン・マンシク、チン・ギョン、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム、ユン・ヨジョン

製作国:韓国(2020年)
上映時間:109分
レイティング:G
原題:지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들
英題:BEASTS CLAWING AT STRAWS

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ヤマダマイ
TS○TAYA→ミニシアター勤務を経て映画ライターをやっています。 謎な映画まとめ記事や、ネタ系ドキュメンタリー映画が好きです。 インドアなのに映画Tシャツを見ると買ってしまうのが最近の悩み。 あと映画ライターと名乗っておきながら、考察記事を書くのは死ぬほど苦手…。(観るのは大好き) Twitter→@serial_mai

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