あまりにも不快な高温多湿の日本の夏!
ゲリラ豪雨もあって出かけたくないし、こんな時には家でカラッと気持ちいい夏の映画を観たいなあなんて思うものの、夏の映画ってたくさんあるからなかなか決められないですよね。
というわけで今回個人的にオススメしたい夏の映画、『キングス・オブ・サマー』についてご紹介できればと思います。
『キングス・オブ・サマー』
ティーンエイジャーたちの家出という手垢つきまくりの題材なものの、一筋縄ではいかないキャラクターやユーモア、目を見張るディティールの数々で王道ながらも独特の味わいがある1作。5年後10年後に観ることで自分の心の試金石になりそうな、大事にしたい作品です。
現地では2013年公開なのに、日本では『キングコング 髑髏島の巨神』のヒットを受け2017年夏に単館でひっそりと公開。
私もハチャメチャに面白かったキングコングの監督が作った”21世紀版スタンド・バイ・ミー”という触れ込みに惹かれて観たくちです。
“21世紀版スタンド・バイ・ミー”。
まさにその通りなんですが、逆にその言葉から期待して出てくるものよりも盛り上がりに欠ける感は否めないんですよね。なので人によっては凡作に感じてしまうのかなと。
どうしても映画の視聴者側としては、青春映画の主人公にはグンと成長してほしいし、映画のストーリーには起承転結・完全決着を求めるじゃないですか。
でも現実って、そんな簡単には成長しないし、パッと人が変わることなんて早々ない。
大きなできごとがあっても、それを経てレベル3からレベル50に一気に上ることなんてなくよくてレベル8になるくらい。
すこし考えが変わって、徐々に成長していく。それが普通だと思うんです。
その普通を、そのひと夏の出来事を切り取ったのがこの『キングス・オブ・サマー』なんじゃないかなって。
少年の頃の鬱屈した感情を決して美化せず、上から目線のクサい説教もしない。
夏の思い出の楽しい瞬間だけでなく、失恋や親友との喧嘩など、当時の“自分”にとっては全てとも言えるものを失う痛みも含めた上での“17歳の夏”が瞬く間に終わっていく。そんな「ガキの頃の思い出」を追体験しているよう。
17歳の夏に家出をして親友たちと秘密基地を建て森の中でサバイバル生活、なんてそんな大それた経験をしたことなんて全くないんだけど、それでもなぜか自分の少年期を思い出してしまう、そんな映画。
映像や演出面は「そりゃ無名ながらキングコングの監督に選ばれるわ」と思わずにはいられない、全シーン小技が効果的に置かれる心地よさ。
謎のドラミングシーンを始め、物語的に”意味のある”効果音の使い方が特に上手いんで、退屈せずに観られます。
かなりのトリックスターである変な少年ビアジオくんは出てくるだけで面白いし、偏屈な親たちの掛け合いもたまらない。
そう、少年たちの立ち位置が染みると同時に、親の意見も充分わかるんですよね。
主人公ジョーの父親もパトリックのイケてない両親も、子を大事にしているからこその鬱陶しさや頑固さである事にさすがに分かる歳になった今、むかし観た青春映画もいま観たら捉え方が変わるのかな……なんて思わずにはいられません。
たった1時間半で夏と青春を存分に満喫できる『キングス・オブ・サマー』、困ったことにセルオフ期間が今年6月に切れてしまい配信・レンタルはおろかセル版も現存するもののみ(Amazonにすらない!)。
冒頭3分だけyoutubeで見られるので、気になったら是非お近くの販売店や中古店を探してみてください。
みなさんもありますか、大事にしたい夏の映画。
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親や学校への不満が積もりに積もった高校生のジョーと親友パトリックはふとしたきっかけから家出を計画。どこか抜けてる不思議な少年ビアジオも混ざり、3人は近場の森に秘密基地をつくり自給自足の共同生活を始める。親も心配し始めたころ、ジョーが想いを寄せるクラスメイトのケリーも秘密基地に。何も起きないはずがなく……。