2019年6月のアメリカでの公開から約1年遅れで2020年6月5日から国内での公開がスタートした『デッド・ドント・ダイ』(The Dead Don’t Die)
緊急事態宣言が解除され営業再開する劇場が多い中、再開一発目に何を観ようか悩んでいる皆様に向けて、本作がいったいどんな映画なのかを紹介します。
『デッド・ドント・ダイ』(原題:The Dead Don’t Die)
監督は『パターソン』『ミステリー・トレイン』などのジム・ジャームッシュで、ジャームッシュ監督作『ブロークン・フラワーズ』などに出演してきたビル・マーレイをはじめ、『パターソン』のアダム・ドライバー、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のティルダ・スウィントンなどが出演しています。
これまでジャームッシュ監督作品に出演してきた俳優陣を起用した同窓会のような映画になっています。
ジム・ジャームッシュ流ゾンビ映画
監督のジム・ジャームッシュはざっくり言うと非常にゆるーい作品群を特徴としている監督です。
例えば、バス運転手のアダムドライバーの平凡な日常を描いた『パターソン』や
吸血鬼の男女がチェスなどをしながら語り合う『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
などを観ると分かるのですが、ドラマ的な出来事が少なく、淡々と起承転結の無い日常を切り取ったような内容に比重を置いています。日本のアニメにおける日常系や空気系と呼ばれる作品群と近い性質ですね。
そうした日常における登場人物の会話などで作り出される独特の雰囲気に魅了されるファンが日本でも近年増加しています。
ジャームッシュ監督作品はそのような特徴からオフビート1な作品と評されることが多く、『デッド・ドント・ダイ』も同様にかなーり平坦に物語が進行していき、その中でビル・マーレイとアダム・ドライバーのすっとぼけたやりとりを楽しむようなタイプの映画になっています。
カンヌ映画祭のオープニング作品となった本作は、ジャームッシュ監督作品のイメージと離れるようなゾンビ物と言うことで話題になりましたが、「ゾンビ」という題材を使ってもオフビートな作風はぶれないため派手なアクション等を期待すると面喰らうかもしれません。
ズレたアダム・ドライバーとヤバいティルダ・スウィントン
本作の特徴的なキャラクターとしてまず、アダム・ドライバーが演じたピーターソン(ロニー)
全体的にすっとぼけた登場人物が多い中こいつは特に言動がズレており、ゾンビによる最初の被害者が出たダイナーに駆けつける際にチョロQみたいなスマートカーで現れ開幕から浮いていました。
その他、メタ的な発言や淡々とゾンビを処理する姿には狂人の風格が滲み出ていました。
次に、ティルダ・スウィントンが演じたゼルダ
死体に死者を冒涜するようなメイクを施し、日本刀でバッサバッサとゾンビを斬る謎の葬儀屋ゼルダ。
歩く際は美しく真っ直ぐ歩き、曲がるときは美しく直角に曲がる…
この人については最後までよくわからなかったです。
ゼルダの行動には終始理解が追いつかないと思いますが、こちらも本作において際立ったキャラクターなので要チェックです。
本作で描かれるゾンビ
予告でも登場しますが、本作のゾンビは生前の消費行動や執着心に則った動きを繰り返します。
コーヒーが好きだった人はコーヒーゾンビに、ワインが好きだった人はシャルドネゾンビに…
Wi-FiゾンビやBluetoothゾンビなど多様なゾンビが登場しますが、現代人の姿を風刺しており、ジョージ・A・ロメロが描いたゾンビ像を踏襲したクラシックなスタイルでゾンビを描いています。
コメディよりの描き方ではあるものの、身につまされる思いも感じるゾンビの姿をお楽しみください。
監督・俳優ファンにはオススメの映画
「ゾンビ」という題材を用いながらも派手な演出やアクションはなく淡々とオフビートに描かれる本作、その独特の空気感を支える俳優陣。
非常に豪華な俳優陣からハリウッド的大作を期待した方は肩透かしを食う可能性が非常に高いため、万人にオススメできる作品ではありませんが、クスッと笑って息抜きに観る映画としてはちょうど良い作品だと思いますので、以上を踏まえて鑑賞を検討してみてはいかがでしょうか?
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ロバートソン署長(ビル・マーレイ)、ピーターソン巡査(アダム・ドライバー)、モリソン巡査(クロエ・セヴィニー)が見守るのどかな田舎町センターヴィルで、死者が墓場から次々とよみがえる。ゾンビは生前の活動に引き寄せられるように町をさまよい、時間を追うごとに増殖していた。三人の警察官や葬儀屋のゼルダ(ティルダ・スウィントン)、住民たちは、生き残りを懸けてゾンビの大群に立ち向かう。