映画『ヴォイジャー』これは宇宙で繰り広げられる学級崩壊映画です

  • 2022年3月24日
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地球に住むことが困難になった近未来で、移住先の惑星を調査するためだけに生まれた若者たちを描いたSF映画『ヴォイジャー』が3月25日に公開されます。

その惑星への移動期間、なんと86年。主人公たちは惑星にたどり着くことはおろか、生涯を船内で過ごし、移住先へたどり着けるのは彼らの孫という橋渡し役です。

そんな運命を背負わされている若者だけが乗る船で、何も起きないはずもなく…。今回はSF映画であると同時に、どこか学園ものの雰囲気すら感じさせる本作をご紹介します。

映画『ヴォイジャー』あらすじ

地球温暖化による飢饉が人類を襲い、科学者たちは居住可能な新たな惑星を探した。そして2063年。可能性を秘めた惑星を発見し、探査隊を派遣することになる。航行にかかる期間は86年。乗員は訓練を受けた30人の子供たちと、彼らの教官であるリチャードが同乗した。子供たちは船内で成長して子孫を残し、惑星に到達するのは彼らの孫の世代だ。子供たちはリチャードに従順に従い、航行は順調かにみえた。そして10年後。クリストファーとザックは、彼らが毎日飲む薬によって人間としての欲望が抑制されていることを知る。そして、反発した乗員たちは本能の赴くままに行動するようになり、ある事件をきっかけに船内の統制が崩壊していく―。(https://voyager-movie.com/)

一度は見たことがあるであろうフレッシュなキャスト

(C)2020 VOYAGERS FINANCING AND DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

主人公クリストファーを演じるのは『レディ・プレイヤー1』(18)で主演に抜擢されたタイ・シェリダン。本作では誰よりも先に、毎日飲まされる薬の正体に気づき、大人たちの規則に疑問を持ち始めます。

彼の親友であるザック役は『ダンケルク』(17)でほぼ無名ながらメインキャラクターに選ばれたフィオン・ホワイトヘッドが熱演。クリストファーと共もに薬を飲むことをやめますが、全く別の思想や感情を抱き、二人の関係にも変化が現れます。

そしてヒロイン・セラを演じるのは、ジョニー・デップの娘で『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』(16)にてバイトJKを演じたリリー=ローズ・デップです。本作では『コンビニ・ウォーズ』で見せたヨガ好き無気力ギャルとは一転して、作中でもダントツで真面目な役を演じています。

さらに、若者たちを指導するために(わざわざ)86年の旅に参加する指導員・リチャード役には『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(22)でペンギンを演じるコリン・ファレルが参加。移住計画のためだけに生まれた若者たちを理解し、助けたいと、常に冷静な判断を務めますが…。

個人的には、フィオン・ホワイトヘッドが演じるキャラクターが『ダンケルク』とは真逆と言っていいほど振り切っていたのが印象的でした。

■ありそうでなかった?移住先探索を子供に丸投げ案件

※おすすめポイント→若者に見てほしいSF

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大人たちの考案した移住計画ですが、そのための子どもは体外受精かつ人工的に作りだすという、冷静に考えたらかなり業が深いことをサクサクとやっています。点滴用のパックみたいなもので胎児がどんどん育つシーンなんて早送りです。いくら移住先が必要とはいえ、モラルがなさすぎる気もしますが…。そんな筆者の気持ちなどつゆ知らず、子どもたちは精神的負担を最小限にするために、外の世界や人間と触れ合うことなく宇宙へ飛ばされました。

近未来でも延命措置はないので、最初の搭乗者はあくまでつなぎ役。子孫を残して、孫の代が移住先(予定)の星にたどり着くという、何とも不遇な立場です…。

冷静に考えたら年功序列で「大人が行けや…」なんて考えてしまいますが、大人から子どもに丸投げする案件は、これまでのSFではちょっとレアな気がします。こんな畜生な案件に関わらなければいけない子どもたちの境遇を考えると、ぜひ同世代に観てもらって、感想を聞きたいところです。

なんなら「コールドスリープしながら移動すればいいのでは…?」と疑問も出ましたが、作中ではリチャードが一刻の猶予もなさそうな発言をしているので、予算的に厳しかったのかも(筆者憶測)

規則を破って欲望むき出しになる若者が素直でよろしい!

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自分たちが背負った任務を理解している若者たち。しかし、任務遂行のために飲まされていた薬に「感情や感覚を鈍らせ、従順にさせる効果」があると知ると、大人たちに操られていると感じて反発するようになります。

これまで抑え込まれていた食欲・性欲・攻撃的な衝動に対しても我慢することをやめ、若者たちの間では過激なグループも生まれました。

特に性欲は露骨に押さえきれなくなっており、もともと体外受精で次の子孫を残す予定だったのに、あちこちでおっぱじめる連中が続出…。

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↑こんなヤリサーみたいな光景まで…(ヤリサーに入ったことないのでイメージです)

86年という長い計画がたった10年でとん挫する危機に直面しますが、最悪のタイミングで宇宙船の外から謎の物音や気配を感じるように。若者たちは「エイリアンじゃない…?」とおびえだします。そして、船外活動の最中にある悲劇が起きてしまい…。

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薬をやめた若者たちの本能が爆発していくシーンは「大人や規則なんかクソ!」と、真っ向から反発しており、これまでにないほど若者たちが生き生きとしています。計画はもうダメかもしれませんが、観ている側としては非常に気分が良いです。素直が一番!

なかには薬を断っても理性を保ち、託された任務を遂行する労働者の鏡みたいなグループもあります。こうして、狭い船内の中で若者たちは「真面目」「反抗期」の二極化してしまい、さらには存在感を強める謎の生命体の真意にまで震えることになるのです。

SF映画であり学園ドラマ要素も満載!          

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若者たちが二極化したことで、事態は混沌を極めるのですが、実は主要キャストの役回りを学園ドラマに置き換えることでスッと話が入ってきます。

たとえば理性を大切にするクリストファーは生徒会長、最初は薬を断つことさえ拒んだセラは学級委員長、「俺が王だ」と傍若無人にふるまうザックを不良に置き換えてみると…あら不思議、まるで学級崩壊を阻止するソリッド・シチュエーションかのように見えてきます。コリン・ファレル演じるリチャードに関しては、学園ドラマに置き換えなくても先生と同じ立場です。

特にセラのキャラクターは、最初こそ「男子って…」とツンツンした委員長キャラですが、薬をやめて、徐々に男子に心を開いていく様子はSF映画にはないドキドキ感があっておススメです(何が?)

学園ドラマに通ずる展開があると気づくと、本作は主人公たちと同世代のヤングアダルトな人たちに響くストーリーだと感じられます。『ヴォイジャー』の監督を手掛けたニール・バーガーといえば、アメリカのヤングアダルト小説「ダイバージェント 異端者」の映画化を担当した人物。『ヴォイジャー』も監督にとってはかなり得意な題材のはずです。

若者たちの反抗と興奮、そしてエイリアンの存在を疑うことで起きる衝突と疑心暗鬼…。

若者たちが果てしない計画と恐怖の存在に、どう向かい合っていくのか?気になる方は是非チェックしてみてください!

映画『ヴォイジャー』作品情報

公開日:2022年3月25日(金)
原題:Voyagers
制作:アメリカ・チェコ・ルーマニア・イギリス合作(2021年)
上映時間:108分
配給:アルバトロス・フィルム
監督・脚本:ニール・バーガー
製作:ベイジル・イバニク、ニール・バーガー、ブレンドン・ボワイエ
出演:タイ・シェリダン、リリー=ローズ・デップ、フィオン・ホワイトヘッド、コリン・ファレルほか

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