複数のページではなく縦長のストリップの形式を特徴とする韓国発のデジタルコミック「Webtoon」は最近日本でもLINEマンガやComico等での配信によって馴染み深いものとなった。
そんな「Webtoon」発作品の実写化として、NETFLIXオリジナル『Sweet Home -俺と世界の絶望-』が非常に高いクオリティと引き込まれる内容で話題になったことが記憶に新しいが、『Sweet Home』に続く形で同じくWebtoon原作の大作がNETFLIXに登場した。それが『スペース・スウィーパーズ』。

近未来の宇宙を舞台に、宇宙ゴミを掃除するゴミ清掃船の乗組員の活躍を描いた本作はSweet Home同様クオリティの高い作品に仕上がっていたためここで紹介しよう。
『スペース・スウィーパーズ』(原題:승리호/Space Sweepers)
本来、2020年夏に公開予定だったものの、新型コロナウィルスの影響で公開が延期され、最終的には劇場公開を断念しNetflixスルーとなったが、リリースから1日で韓国・フランス・フィンランド・バングラデシュ・マレーシアなど16カ国のNETFLIXランキングで1位を占め、翌日にはロシア・デンマーク・香港などが追加され25カ国1位となり、世界1位を記録した『スペース・スウィーパーズ』。




チョ・ソンヒが監督を務め、『私の狼少年』のソン・ジュンギ、『1987』のキム・テリ、『キングダム』のチン・ソンギュらが個性の強い宇宙清掃員を演じる。
『お嬢さん』『1987』を始め少女のイメージが強いキム・テリが荒くれ者達を率いる船長役を活き活きと演じるなど配役の意外性も楽しめた。
本作の魅力は何と言ってもハイクオリティなVFXで、韓国のVFX会社8社、合計1000人のVFX専門家が参加したと言われる本作の制作には240億ウォン(約22億6000万円)の制作費が投じられており、宇宙空間や近未来の表現、宇宙での戦闘描写はハリウッド大作と遜色無いクオリティに度肝を抜かれる。




韓国初のスペースオペラ作品として、モバイル版PUBG等でお馴染みのテンセントの出資もあり大きな予算を持って制作された本作だが、ハリウッドでの同ジャンルの作品と比較すれば桁が一つ違うほどであり、作品の規模・クオリティで考えれば低予算と言っても過言ではない中これほどのクオリティの映像として仕上がっていることに驚きが隠せない。
宇宙空間での戦闘描写や荒くれ者が集う宇宙船、スペースコロニーと地球間の差別意識、スペースデブリ問題など、『スターウォーズ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『カウボーイ・ビバップ』『ガンダム』『プラネテス』等を始めとする既存のSF作品を彷彿とさせる設定・表現をストレートなシナリオで描くため、この辺りは好き嫌いが別れるかもしれないが、派手でクオリティの高いVFXも相まって娯楽活劇として楽しめる作品に仕上がっている。
金への執着が著しい主人公テホや、見た目はタトゥーゴリゴリで厳ついが割と優しいパク、皮膚移植をし人間の姿になることを夢見るロボットバブズと、彼らを率いるクールな船長チャンといった宇宙清掃員クルーの掛け合いはキャッチーで面白く、それぞれキャラが立っている。




終盤ではそれぞれのキャラクターの素性も明らかになり、戦闘シーンでは宇宙空間を「銛」を使って飛び回り宇宙船を単身撃破していくバブズや、強力な兵士に対して自身の素性を活かした戦闘方法で立ち向かうパクの姿が非常に魅力的に描かれ、クライマックスへと向かっていく。
映画の尺の都合上仕方ないものの、終盤が忙しない展開となるため、魅力的なそれぞれのキャラクターをもっと深掘りして欲しかったのは否めない。




近未来で同時翻訳機が存在するという設定で韓国語だけでなく英語他、多言語が用いられている点や、非常にリッチなVFX表現を用いたSF作品というこれまでにない珍しい韓国映画ではあるものの、演出や舞台設定はベタなものであり、シンプルなSF娯楽作品として仕上がっている本作。
韓国映画ファンのみならず、SFファンの方も韓国初のスペースオペラとして一見の価値がある『スペース・スウィーパーズ』はNETFLIXにて配信中。




また、原作Webtoonの邦訳版が2/8から電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」にて連載スタートしたため、映画で魅力的なキャラクターや世界観に惹かれた方は原作も併せておすすめ!
作品リンク:https://piccoma.com/web/product/56823
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2092年、地球は砂漠化や土壌の酸素化が進み、人間がほとんど住めなくなっていた。宇宙開発企業UTSは宇宙空間に人類のための新しい居住地を建設するが、選ばれた一部の人間しか住むことが出来ない。
宇宙船「勝利号」は、チャン船長(キム・テリ)や操縦士のテホ(ソン・ジュンギ)を中心に、宇宙に散乱する金目のゴミの掃除に励む日々を送っていた。腕は確かだが、荒っぽい仕事さばきのせいで稼ぎは修理代に消え、借金が嵩んでばかりの貧乏船だ。
ある日、テホが業務中に一人の少女を発見する。その少女は行方不明の子ども型ヒューマノイド「ドロシー」に酷似しており、水素爆弾を内蔵した大量破壊兵器だという。金欠に喘ぐ勝利号の乗組員たちは、ドロシーを使って大金を得ようと危険な取引に乗り出す。