2020年2月に公開された『犬鳴村』のDVDが8月にリリースされた。
その数週間前に、レンタルビデオ店のGEO先行レンタルとしてリリースされた、映画『風鳴村』はご存知だろうか?
罪人どもを乗せた地獄のバスツアーを描いた、オランダのホラー映画なのだが…これ、タイトル的にセーフなの?完全にブームに乗っかているだけじゃないの?という考えが頭をよぎった。
今回はこの2作を視聴し、どちらが本当に怖いのかを(勝手に)調べてみることにした。
ついでに、前回執筆した『ジェイコブス・ラダー』の比較記事のように、あまり生産性がないであろう比較ポイントもまとめてみた。
『犬鳴村』あらすじ
臨床心理士の森田奏の周辺で奇妙な出来事が次々と起こりだし、その全てに共通するキーワードとして、心霊スポットとして知られる「犬鳴トンネル」が浮上する。突然死したある女性は、最後に「トンネルを抜けた先に村があって、そこで○○を見た……」という言葉を残していたが、女性が村で目撃したものとは一体なんだったのか。連続する不可解な出来事の真相を突き止めるため、奏は犬鳴トンネルへと向かうが……。
https://eiga.com/movie/90455
『犬鳴村』は、とにかくストーリーがじっとりして不気味という印象が強い。
音で驚かしたり、人体損壊をしたりといった演出を抑え、ストーリーで怖さを追求している。
『犬鳴村』のストーリーは、都市伝説やUMAのwikiなんかをつい読んでしまう、あの感覚に近い引き込み具合がある。
ほかの演出面では、女の子が失禁しながら散歩したり、霊感の強いヒロインが、幽霊を4人車に乗せてメチャクチャ嫌そうに運転したりと、若干シュールな面も。(だからそこ、恐怖回避ばーじょんはすごく見たい)
『風鳴村』(原題:The Windmill Massacre)あらすじ
ある秘密を抱えてアムステルダムで暮らすジェニファー。仕事の雇い主に偽造パスポートがバレた彼女は、逃げるように通りがかった観光バスツアーへ参加する。オランダの風車を巡るツアーだったが、乗客たちを乗せたバスがエンストしてしまう。近くに大きな風車が見えたため、一同は助けを求めに風車の近くにある小屋へ向かうことに。しかしその風車は、ある残酷な歴史を抱えた、地図にもない曰く付きの風車だった。さらにバスツアー乗客たちは、ジャニファーと同じく人には言えない秘密を抱えていて…。
罪人の血を注ぐことで動き出す風車に、罪人どもがホイホイやってきてしまうスプラッターホラー『風鳴村』。
エコなシステムで大変感心だが、90分もない尺に罪人を6人とマシマシにしている。
欲を出しすぎた結果、彼らの何なの罪でここに来たのか、(何故かこちらが)想像力を働かせる場面がちらほらある。
とはいえ、死に様のレパートリーは豊富で見どころ満載。グロ描写は『犬鳴村』よりも遥かに高い。
『犬鳴村』『風鳴村』の共通点
全く無いように思えた『犬鳴村』と『風鳴村』の共通点。しかし、いくつか似たような設定が存在した。
・電気会社と製粉会社
『犬鳴村』で登場する不気味な都市伝説には、ある電力会社が大きく関係している。
なんなら、その電力会社が都市伝説を生み出したと言っても過言ではない。
一方で、『風鳴村』は製粉業者が利益を追求するあまり、悪魔に魂を売ることで無風の日でも風車が回るようにした。
両作を見ると、ビジネスマインドも突き詰めればホラーになるという気づきが得られる。
・日本文化が描かれてる
厳密には共通点ではないが、『風鳴村』には日本人青年タカシと、日本でモデル経験のある女性のカメラマンが登場する。
風車の周辺では、バスツアーの乗客(=罪人)に罪を再体験させる幻覚シーンがある。
カメラマンは日本で罪を犯したことで、ちょうちんや風鈴を幻覚で見るなど、たしかに村っぽい演出が垣間見えた。
・犬が登場する
なんと、本作には犬が登場する。
タカシの幻覚シーンで、メグちゃんという名の犬が現れるのだが、なぜ現れたのかは不明。
そもそもタカシに関しては、最初から最後まで謎が多い。急にイタコみたいなことするし。
(ちなみに『風鳴村』は2018年の映画なので、『犬鳴村』を意識したわけではなく偶然)
『犬鳴村』『風鳴村』本当に怖いのは…
人体破壊など露骨なグロ描写がほとんどないのに、不気味な空気感を出している点では、『犬鳴村』の方が怖いと言えるだろう。(そもそも怖いの基準は人それぞれなので、この勝負自体不毛だろ。とか言わないで…)
しかし『風鳴村』にも負けていない点があった。
それは日本人青年タカシのキャラの強さである。
こればかりは『犬鳴村』の主要キャラが束になってもかなわない。
ほかのツアー客が持つ秘密はある程度分かるのに、タカシだけアムステルダムを訪れた目的、そして彼の抱える罪などの情報が不明なのだ。尺の関係でカットされたのか、最初から設定がないのか…。
亡きおばあちゃんのためアムステルダムに訪れたようだが、そのおばあちゃんがなぜ死んだのかはさっぱり分からない。
さらに、タカシだけ自分の罪を認めて謝罪したことで、風車による犠牲から逃れらている。でも、何の罪を犯したのかは分からない。
特にヤバいと感じたのは、タカシの日本語セリフが不安定すぎて怖い謎演出である。
主人公ジェニファーと一緒に不可解な死を目撃したタカシは、すぐに詳細を伝えようとするのだが、まるで要領を得ていない。
「ボクたちは…今…地獄の門の前に立っていて…」など前置きから壮大である。今、前置きいらなくない?不安定な日本語を見事に翻訳するカメラマンも一体何ものなのだ…。
さらに、この不可解な死の真相を暴くためにイタコのようなこともするなど、設定が大渋滞している。この時につぶやくセリフも不気味で怖かった。次の”村シリーズ”はタカシの前日譚がいい。
ちなみに『犬鳴村』に関しては、「実録!恐怖の村シリーズ」第2弾として『樹海村』の製作が決定している。こちらは富士の樹海を舞台にした「村ホラー」とのこと。
現在公開されているビジュアルは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を彷彿とさせる禍々しさを感じる…。
GEO先行レンタルの『風鳴村』も、引き続き「村シリーズ」で勝負を挑むのか、今後の動向に注目したい。
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