映画『AVA/エヴァ』公開前レビュー!殺し屋だって企業の歯車になんかなりたくない!

先日、知人が大企業からベンチャー企業に転職したのですが、その理由が「大企業では自分の仕事がどんな意味を成しているのか分からず、まるで歯車の一部だったから」と話していました。

それ、実は殺し屋も同じです。

4月16日(金)より公開される映画『AVA/エヴァ』では、殺し屋である主人公・エヴァが「なぜ対象者は殺されるのか?」という疑問を常に持っていたことで、仕事や人生に大きな影響を及ぼしていく様子を描いています。

殺し屋も我々労働者も、仕事とプライベートの両立が大切なんだなあと痛感する作品です。

映画『AVA/エヴァ』概要

あらすじ

美しき暗殺者エヴァ。完璧な容姿と知性、そして圧倒的な戦闘能力。組織に命じられるまま完璧に任務をこなしながらも常に「なぜ標的たちは殺されるのだろうか」と自問自答を繰り返していた。ある日、エヴァは全組織員が注目する極秘の潜入任務に臨むが、組織から事前に与えられていた重要な情報に誤りがあり、そのことでエヴァの正体に気づいた敵と熾烈な銃撃戦になってしまう。辛くも生き延びたエヴァは、関係者の中に自分を陥れようとしている存在を疑い、次第に組織への激しい不信感を募らせていく。そんなエヴァに、組織にとって危険因子となった彼女を秘密裏に始末しようする最強の殺し屋”サイモン”の魔の手が迫っていた。暗殺者VS暗殺者、血で血を洗う戦いの火蓋が今、切って落とされる。

『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』の監督とジャストが再タッグ 

©2020 Eve Nevada, LLC.

映画『AVA/エヴァ』はアカデミー賞助演女優賞を獲得した『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(11)のテイト・テイラー監督と、同作品に出演したジェシカ・チャステインが再タッグを組んだ作品です。

テイト・テイラー監督と言えば、エミリー・ブラントがベロベロに酔って殺人事件に巻き込まれる飲んべえサスペンス『ガール・オン・ザ・トレイン』(16)を手掛け、ジェシカ・チャステインは『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)や『IT/イット THE END ‟それ“が見えたら終わり』(19)など大作に多く出演する女優です。

今回ジェシカ・チャステインが演じるのは「殺し屋」というハードな役ですが、過去の作品でもかなり強烈なキャラを演じています。マフィアの娘であり、真面目な夫の起業に「力技」を使いたくてうずうずする『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(14)や、仲間さえも欺き成功を手にしようとするロビイストを演じた『女神の見えざる手』(16)などなど…。

そして、彼女の出演する多くの映画にハズレがないのです。これは『AVA/エヴァ』もただの殺し屋映画ではない…。そんな期待が持てるキャスティングとなっています。

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共演には『マルコヴィッチの穴』(99)のジョン・マルコヴィッチが殺し屋を取りまとめるボスとして出演。エヴァを陥れようとする同業者には『ロブスター』(15)のコリン・ファレルが名を連ねています。そしてその娘役として『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)にも出演していたダイアナ・シルバーズが出演しました。

余談ですが、本作のOPがエヴァの経歴を紹介する形を取っており、特殊部隊の戦いを描いた『マイル22』(18)っぽくてかっこよかったです。(ちなみに『マイル22』でもジョン・マルコヴィッチが特殊部隊の司令官役で出演しています)

ジェシカ・チャステインのアクションはパワー系

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↑これはものすごい勢いで飛び膝蹴りをするジェシカ・チャステイン

殺し屋映画と言えば、やはり見逃せないのがアクションです。ジェシカ・チャステインは見た目がとてもスタイリッシュなため、てっきり鮮やかでスピード感のある立ち回りが見られると考えていたのですが、これが真逆でした。

エヴァが暗殺のためにターゲットへ接近するも、雇い主側のミスで大勢の敵から追われる場面がありますが、とにかく重厚なパワー技で敵を倒していきます。背負い投げで相手をねじ伏せ、マシンガンを奪って全力疾走。そのマシンガンも射撃だけでなくグリップ部分で敵をボコボコにするなど、パワーでぐいぐい押す戦闘術が目を見張ります。敵は重装備なのにエヴァは真紅のドレス一枚で敵をなぎ倒していく姿も見ていて楽しいです。

何よりパンチ音がすさまじい。バシ!とかボコ!じゃなくて「ドゴォ!」です。滅茶苦茶痛そう。

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もちろんひたすら無双するだけのアクションではなく、強敵を前に苦戦を強いられる様子も。ボロボロになりながらも己の信念と職務を全うする姿は、殺し屋でなくても力が入ってしまうシーンでしょう。

殺し屋業界と一般企業の共通点

©2020 Eve Nevada, LLC.

本作の主人公であるエヴァは非常に有能な殺し屋であると同時に、常に自分の対象者が殺される理由を知りたがります。そして、自分の仕事が何を意味しているか分からない状態で40人以上を葬ってきました。冒頭に書いた「大企業で勤めても、自分が何のための仕事をしているかわからない」と言っていた知人の顔が浮かんできます…。殺し屋も我々労働者も、企業の歯車として働くのはしんどいものです…。

しかし殺し屋業界では対象者と必要以上に話すことはご法度とされており、その掟を破りまくっているエヴァは同業者から警戒されてしまうのです。自分の職務に疑問を持った時点で消されるとは…字面で見ると滅茶苦茶ブラック企業なのがまた怖い。

映画『AVA/エヴァ』に限らず昨今の殺し屋映画では、世知辛い殺し屋たちの職務実態を描く作品がいくつかあります。業界で(奇跡的に)定年退職する男が、退職金を払いたくない組織に狙われる『ポーラー 狙われた暗殺者』(19)や、漫画家になる夢を捨てきれず、自らの死を偽装してまでweb漫画家デビューをした暗殺者を描くコメディ映画ヒットマン エージェント:ジュン(20)など、あらすじだけで業界界隈の過酷さが伝わってきます。

映画『AVA/エヴァ』の場合も、(フィクションとはいえ)殺し屋の世知辛い背景を赤裸々に描くことで、私たち労働者も共感できるのは非常にユニークです。 

殺し屋だって帰省する

©2020 Eve Nevada, LLC.

映画『AVA/エヴァ』がこれまでの殺し屋映画と異なる点は他にもあります。それは、エヴァ自身の背景を丁寧に描いている点。これまでの作品だと、殺し屋は非常にミステリアスな存在でした。経歴は抹消され、過去を捨て、職務を全うする…。

エヴァも8年姿を消しますが、その後は普通に家族や元恋人と会ったり、実家に帰ったりしています。意外と日常に溶け込んでいるのです。特に家族とのシーンを積み重ねていくことで、なぜエヴァが家族の元から姿を消して殺し屋になったのか、その全貌が徐々に見えてきます。

最初こそ「殺し屋だけど普通に家族に会えるんだ…」と思いましたが、ホアキン・フェニックスが主演の映画『ビューティフル・デイ』(17)でも、主人公の殺し屋(正確には行方不明になった少女を救出するために犯人を殺す)は母親と二人暮らしでした。あながち殺し屋を生業にしている人が、普通に私たちの生活圏で普通に暮らしているというのもファンタジーではないのかも…?

実際、エヴァの存在は仕事以外では普通の女性です。元カレに会って気まずくなったり、母の小言を聞いて顔をしかめたり…。そして自分の仕事に疑問を持ったりするのです。

本作は過激なアクション映画と同時に、ちょっと変わった仕事を生業にしている女性が、人生や自分自身に葛藤するヒューマンドラマでもありました。

©2020 Eve Nevada, LLC.
↑これはコリン・ファレルに「ドゴォ!」パンチをしようとするジェシカ・チャステイン

アクション要素に負けないほどドラマ要素にも力を入れている本作ですが、製作には主演のジェシカ・チャステインも参加しています。それだけエヴァというキャラクターに強い想いがあるのでしょう。同じく主演が製作を務めた作品にはシャーリーズ・セロン主演作の『アトミック・ブロンド』(17)やマーゴット・ロビー主演作『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(20)などがあり、こうした作品と肩を並べられるかどうかも注目したいです。

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余談ですが侮れないジョン・マルコヴィッチの活躍も必見です。年寄りの言うことは素直に聞くものだなあ…。

映画『AVA/エヴァ』作品情報

©2020 Eve Nevada, LLC.

出演:ジェシカ・チャステイン『ゼロ・ダーク・サーティ』、コモン『ハンターキラー 潜航せよ』、ジョン・マルコヴィッチ『RED/レッド』、コリン・ファレル『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
監督:テイト・テイラー『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』
2020年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/5.1ch/97分/英語ほか
原題:AVA/レイティング:PG12/日本語字幕:平井かおり 配給:クロックワークス

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