ぼっち、スクールカーストなど、学校ではイケてる奴が正義という風潮は、今も存在します。それは日本だけでなく、海外でも同じことが言えるようです…。
おまけに海外はスケールがデカいので、リア充(死語?)と非リア充(死語?)の差もデカい。それだけに、洋画の“非リア充”青春映画は、同じ境遇である(あった)人にとって救いのような作品でもあります。
今回は高校時代カースト最下層過ぎて、上位層に「あの辺の人」と言われたり、成人式では面と向かって「あなたのこと覚えてなんですよね」と異性に言われた筆者が、非リア充にとっての救済映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』をご紹介します!
『エイス・グレード』おしゃれ映画と思うなかれ!その内容は非リア充への応援賛歌
公式サイトを見ると、いかにもティーン受けを狙ったようなデザインが所狭しと飛び交っていますが…。
著名人のコメントには『ゼロ・グラビティ』(13)のアルフォンス・キュアロンが「ここ最近で一番、泣いた映画。」とあり、“ベーコン指数”でおなじみのケヴィン・ベーコンは「この映画が大好きだ。」とコメントするなど、大のおっさんからも絶賛されているのです。
ちなみに制作は、最近何かと話題の製作会社「A24」(筆者はいつも「えーにじゅうよん」と読んでしまいます…)
アカデミー賞を受賞した『ムーンライト』(16)などハイセンスな映画を打ち出す、今ノリにノッている会社です。
製作だけでなく配給でもその手腕を見せており、死体を活用して無人島をサバイブする『スイス・アーミー・マン』(16)や、スウェーデン大使館から「がんばって忘れて」と言われてしまった“謎の公認ホラー映画”『ミッドサマー』(19)など、キワドい系の作品を配給しています。
果たして『エイス・グレード』は前者なのか、後者なのか…?
荒削りのすぎるYouTuber ケイラ
『エイス・グレード』の主人公ケイラは中学卒業を控えた、周りと上手く馴染めない女の子。
公式のキャッチコピーには「いいねの数」と書かれていますが、彼女はYouTuberとして動画を投稿しています。
しかし、この動画がまさかの一発撮り。編集も一切入れていなければ、その内容は「おしゃれなヘアアレンジ」とかではなく「友達との距離の縮め方」など、年の割に自己啓発のようなものばかり。当然、再生回数は0〜2回というしょっぱい数値…。
本編を見ると、その動画はケイラ自身にも向けられている内容だとわかり、より切ない気持ちになります。
動画では色々しゃべるけど、学校生活では無口すぎて、もはや誰からも相手にされていません。
残された中学校生活で、理想の自分に変わることができるのか?というのが本作のテーマになっています。
この娘にして、このパパあり
そんな切ないオーラが凄まじいケイラの父は、母親不在のため思春期の娘との接し方に終始戸惑いっぱなし。
ケイラが食事中にイヤホンをしていることを注意しては逆ギレされ、好きな男の子を振り向かせるために、バナナで特訓しようとしていたところを目撃して逆ギレされるなど、常に愛娘の逆鱗にベタベタと触れてしまいます(しかも悪気がない)
あと娘から「キモいんだけど」と言われて泣いちゃうシーンもあるのですが、正直、何度も娘の部屋に上裸でやってきて「おやすみ」を言うようでは仕方ない気もします。(しかも悪気がない)
『エイス・グレード』ではケイラの変化と同時に、そんな娘とどう向き合っていくのか?というお父さんの変化も見どころの一つです。だからこそ、アルフォンソ・キュアロンなどオッサン世代にも刺さっているのかもしれません。
【キャラの大渋滞】ようこそ、中学生の無法地帯へ
ケイラの地味さに拍車をかけているのが、クラスメイトのクセが強すぎる個性です。
千鳥のノブ氏が転校してきたら、間違いなく過労死するレベル。
授業中にジェンガをするやつがいたり、対テロ対策訓練を行っている最中もスマホを触る緊張感のなさ(全員『エレファント』を見ろ)。
極めつけは、保健体育の授業中に公衆の面前で隠れて自慰する者まで…(矛盾していますが、本当にこの通りなんです…)。ここまで来ると、もはやスクールカーストの概念なんてぶっ壊れています。
ちなみに上記でも書いた、ケイラが振り向かせたい男子・エイデンは、学校にテロリストが乗り込んできたら銃を奪ってぶっ飛ばすそうです。へえ〜。
他にも、ケイラがリア充に(しぶしぶ)誘ってもらえたプールパーティでも、個性豊かすぎるメンツが多数登場します。
しかし、それらのキャラが霞むほどの水着を着てるケイラが、なんともいたたまれません…。アレはおしゃれなのかダサいのか…。
プールパーティでは、集合写真やカラオケ、プレゼントを渡す場面など、ぼっちには生き地獄のような場面が続きます。
【結論】非リア充で何が悪いっ!
ここまで、いかに『エイス・グレード』がおしゃれな皮を被りながらも、非リア充にとって身につまされる内容を詰めこんでるのかを紹介しました…。
しかし、この映画が一番伝えたいことは「変わらないことの大切さ」なのです。
無理して周りに合わせる必要なんてない!この映画を見ると、自分を好きになることも悪くないんじゃない?と思わせてくれます。
ほかにも、大人からすれば大したことないような場面でも、ケイラにとってはどれも滅茶苦茶大事なことなので、サウンドトラックもすごくオーバーな曲調で楽しいです。
ケイラは中学卒業間近ですが、進級や新社会人など、新しい環境に出ていく人にもおすすめな作品かもしれません。背中を押して貰えるというより、肩の力を抜くことができる良作でした。
…なんだか真面目な締めになってしまったので、最後に作中で登場した「100人中100人が小・中学時代に目にしたことがある人」の場面写真でお別れです!
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中学校生活の最後の一週間を迎えたケイラは、「学年で最も無口な子」に選ばれてしまう。不器用な自分を変えようと、SNSを駆使してクラスメイト達と繋がろうとする彼女だったが、いくつもの壁が立ちはだかる。人気者のケネディは冷たいし、好きな男の子にもどうやってアプローチして良いか分からない。お節介ばかりしてくるパパはウザイし、待ち受ける高校生活も不安でいっぱいだ。中学卒業を前に、憧れの男子や、クラスで人気者の女子たちに近づこうと頑張るが…。